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雑記帳
2019.04.16:異世界居酒屋のぶ第八巻

この作品については以前もこの場で言及している。 そのコミカライズの最新巻である第八巻を購読。

前巻収録の最終話は、それこそ最終回かと思わせるような怒涛の伏線回収と各話の登場人物達の大量出演による大団円の様相。 これで完結なのかと気になり、原作がアップされているサイト「小説家になろう」を確認すると、まだまだ続編が多数公開されており、取り敢えず一安心。
つまり、当該作品については先ずアニメから入り、そしてコミカライズ、更に原作と、本来からすれば逆の順序で接したことになる。 前巻読了後にその続きを原作にて読むことで、今後の展開を概ね把握してしまったし、あるいはコミカライズの既刊に埋め込まれた今後につながる伏線についても予め知ることとなってしまった。 それでもなお最新刊を購読したのは、原作にて書かれた各エピソードがどの様に描写されるのかということへの興味になる。
ヴァージニア二等兵なる著者の作画は、初期からの安定感を保ちつつ更にこなれて来た感がある。 登場人物たちの細かな表情や仕草、そして客に供される美味しそうな料理。 更には背景描写に至るまで、なるほどこの様に表現するかと感心しながら、そして愉しみながら読み進めることとなる。

中世のヨーロッパをイメージさせる異世界と繋がってしまった現世の居酒屋が、その異世界の住人相手に供する料理とおもてなし。 初めて目にする日本のありふれた居酒屋メニューと、それを給仕する異民族(日本人)の店員のことを最初は訝しく、あるいは場合によっては見下すような態度で接していた客が、しかしそのサーヴィスに感嘆し、徐々に当該居酒屋のファンになってゆく。 その流れが、時には異世界における制度や政治そのものまで動かしてしまう。 有り体に書いてしまうとこの様な骨格に基づく各エピソードは、なるほどそのタイトルが示す通り、いわゆる異世界モノに属するということになろう。
世の中、この手の作品はラノベを中心に星の数の如く。 果たして、そのルーツは何処にあるのだろう。

ところで、第八巻は異文化への感嘆といった基本骨格はやや後退し、既刊で登場済みの人物たちの掘り下げがメインとなった印象。 それはそれで物語に一層の深みと広がりを与えるものであり、今後の更なる展開を期待させる。

2019.04.10:メーカー住宅私考_103
パルコン・グランドライフ


本文中の画像は、かつて千葉市内に設営されていた千葉県総合住宅展示場に出展されたパルコン・グランドライフの縁側付きタイプのモデルハウス。
そのプランの型式について、資料には「G427-5T63DK6E35」と表記されている。

のどかな田園風景を車窓から眺めている折、豪壮な民家にしばしば遭遇する。 それは例えば、お城の天守閣かと思わせるような威風堂々たる入母屋屋根を載せたものであったり、何やらド派手な巨大洋風住宅であったりと、都心では見掛けぬ様態が見て取れてなかなか楽しい。 いずれも、見事な屋敷森や庭園に囲われ、あるいは格式ばった門を構えた敷地に建っている。 その地にて何代にも亘って農業を営んできた地主の家なのだろう。
そしてそんな事例の中には、フラットルーフで構成された鉄筋コンクリート造のものも時折見かける。 恐らくそれらは、主に木造で建てられる前二者の事例よりも近代的で先進的で豪華で贅沢で、更には堅牢性や耐火性といった面でも優位であろうとする価値判断から選択された建築形式であったのではないか。 あるいは、先祖代々受け継いで来た旧態の古民家に纏わりつく不便さや不快さへの嫌悪を発端とした全く異なる住まいへの建て替えへの希求の結果なのかもしれぬ。

昭和50年代に大成建設が商品体系の一つとして掲げていたパルコン・グランドライフの縁側付きタイプは、そんなニーズへの接近を企図したモデルであったのかもしれぬ。
上述の事例に比べるとやや矮小ではあるものの、たっぷりとした間口を持つ堂々とした佇まい。 その上に載るフラットルーフが生み出すのびやかな水平ライン。 その鼻先には、テーパーと刳型を施してささやかな表情を外観に与えている。 プレーンな白壁や玄関廻りに施されたレンガ調タイル張りの壁面は、田園の緑に良く合いそうだ。 更には、かつての古民家に必須の広縁を暗示させる床から天井まで目一杯のハイサッシを水平に連続させた一階南面の開口部。
これらの設えは、単に必要に応じ無機的に壁に開口を穿っただけという印象であった旧来のコンクリート系プレハブ住宅とは一線を画す。 RC造としての安定感。 逆にRC造らしからぬ繊細さ。 そして、直線の構成によって近代的な合理性を表しつつ、広縁の存在を暗示させるサッシの並びに古民家への懐旧も滲ませる。
屋内を見れば、PCaを用いた壁式構造の生産性・施工性に依拠した整形グリッドに基づく壁面配置が、伝統的な「四つ間取り」に通じる骨格を持つプランを生成している。 広縁に面した和室の続き間はその顕れだ。
このように読み解いてみると、当該モデルが発売された時期における農村向け住宅としての商品的な位置付けがそこに見えてくる。 あるいはそこまで見立てないとしても、それまでのコンクリート系戸建てプレハブ住宅に共通して見受けられた無味乾燥とした内外観から離脱しようとする指向。 即ち、規格住宅から商品化住宅への移行。 しかもそれが、コンクリート系プレハブ住宅ならではの商品性を追求したものであること。 そんな動きを、同社の戸建て事業開始から約10年を経て発売されたこのモデルに見い出すことが出来る。

2019.04.03:失われた建物に纏わる小さな記録
※1

南西側外観。
この写真を撮影した時点では、外部建具は全て二枚引違い段窓のアルミサッシに改められていた。
左手に隣接する二階建ての建物も、同学院の施設。

※2
本文中の二枚の写真は、竣工して間もない頃に撮影されたもの。 同学院の校報より引用。

北海道ドレスメーカー学院
旧所在地:札幌市中央区南4条西16丁目2番5号

敷地は、市中心部を東西方向に通る南4条仲通と、南北方向に通る西18丁目通に面する角地。 従って建物は南側と東側の二面が接道し、双方にそれぞれ異なる意匠が与えられている。
矩形ボリュームを持つ建物の長辺側となる南側立面を構成する外表面は、それが柱梁フレームから切り離された帳壁であることが容易に読み取れる。 フロアごとに縦横の細いフレームによってグリッドを形成。 その各桝には、最小限の腰壁以外を全て二段引違いのアルミ製連窓を嵌め込んでいる。 この連窓は竣工時はスチール製で、各桝に四行三列の割り付けが施されていた。 個々のプロポーションが横長となる12枚の建具は一部の突出し以外は固定窓。 私が実見した時点のアルミ製建具で構成された立面よりも端正な外観を形成していた様だ。 最下階を半地下とすることで、これらの立面が地上から切り離されながら立ち上がる。
妻面にあたる東側立面は、南側のそれとは異なり密に配した細いマリオンの間にガラスを嵌め込んだ意匠。 半地下を基壇とし、その上にマリオンにより中間部の立面が形成され、その上にガラス壁を強調されたペントハウスを載せた明快な三層構成。 更にその頂部に塔状の装飾を載冠させた外観はなかなかシンボリックでもあり、前述の南側立面と相まって竣工した1956年当時においては周囲に対して十分な先進性を持って都市の中に収まっていたことであろう。


南東側外観

エントランス廻り

同校の過去の資料に掲載されている校舎の平面図をみると、南北双方の桁構面にキャンチスラブを大きく張り出す構造形式が読み取れる。 建物最上階のほぼワンルームの大空間となった講堂において、その特徴が顕著に視認される。 門型の柱梁フレームが幾重にも並び、そのフレームの外側に十分な離隔をもってガラスを多用した帳壁が内外を分かつ。 その巨大屋内空間も、フレームによってペリメーターゾーンとインテリアゾーンを視覚的に分かつ。 資料に載る画像からは、この空間の特性を活かした様々な利用がなされていたことを確認できる。
ちなみに、帳壁の下部にはスチーム暖房のラジエーターが設置されていた。 その蒸気を供給するボイラー室が半地下階に。 同フロアにはほかに、調理実習室を配置。 地盤レベルから約半層分持ち上げられた一階にはエントランスと学校運営のための事務関連の諸室を配置。 二階に教室群。 そして三階の講堂という内部構成。
当該校舎以外に、木造の既存校舎及び同じ学校法人が運営する短期大学の校舎が同一敷地内に連なっていた。 ちなみに短期大学の校舎の設計は久米設計、施工は清水建設。

同学院は、2013年に同じ学校法人が運営する「北方圏学術情報センターPORTO」という施設内に移転。 それに伴い当該校舎は除却された。 Googleストリートビューで確認すると、現状は短期大学の校舎が残存するものの、他は更地。 短期大学の方も江別市に移転済み。

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