お台場で2013 TOKYO EXHIBITIO HOUSE VISION※1なるイベントが開催されていることはポスター等の告知で知っていたけれども、特段興味無し。
しかし、ひょんなことから招待券が手に入ったので、出向く。
タダ券を入手した途端に見に行くというのも何だかエゲツ無いが、まぁ、しょせん私はそんな人間。
ということで、会期末が迫った平日の夕刻、そのイベントに赴く。
著名建築家が様々なメーカーとコラボして作り上げた幾つかのパビリオンによって、新たな住まいのあり方を提示しようというこのイベント。
以下に、各パビリオンの感想を軽く記してみる。
住の先へ:LIXIL×伊東豊雄
軽やかに流れつつ全体が緩く繋がる空間の中に入れ子状に設えられた閉鎖的な蔵の如き部屋。
これを、シルバーハットと中野本町の家の考え方を並置したものと解釈するのは安直ということになるのであろうか。
開放的なシルバーハットも自閉的な中野本町の家も、永く住み続けるには少々先鋭的。
両者のバランスを程よくとった空間こそが心地良い。
かつて発表された全く方向性の異なる二つの自邸に対し、今現在の回答としてそんなことを指し示しているのだとするならば面白い。
移動とエネルギーの家:Honda×藤本壮介
建物内外を曖昧に仕切る三重の入れ子構造は、氏の作品「house N」からの引用であろうか。
そこに自らのアイデンティティを表出しつつ、あとは、コラボする本田技研が開発を進める各種動作補助ギミックのプレゼンに抗わぬユニバーサルな内部空間の展開に割り切っているあたりは、イベントへの器用な参画の仕方といったところ。
その器用な単純さによって、提案された空間の意図が読み取りやすいという感はあった。
写真はパビリオン内の展示。本田技研が開発中の歩行アシスト機器に跨って盆栽の手入れをする住人の様子が示されている。
そこに見い出されるものは、これらのギミックに支えられながら日々暮らす独居老人という今後爆発的に増加するであろう生活像。
私自身にとっても遠い未来の他人事ではないので、少し複雑な気分になる。
地域社会圏:
未来生活研究会×山本理顕,末光弘和,仲俊治
その複雑な気分に対する一つの応答が、隣接するこのパビリオンにて提示されているように思えた。
もしもそういった意図を持って会場を構成したとするならば面白い。
集合住宅の形態を更に進展させることで企図した地域社会圏の構築。
それは、独居が増加する中での新たなユートピアなのかも知れぬ。
しかし、その実現性と永続性は、今の世の中にあって如何程のものか。
巨大な集合住宅の模型を前に少し考えることとなった。
数寄の家:住友林業×杉本博司
個人的には、このパビリオンが一番好みに合致したかな。
でも、竹ボウキを逆さにして並べて設えた垣根は、直截過ぎて今一つ。
スケルトン状態の茶室も、展示の必然性が読めぬ。
しかし、その茶室に対面する母屋の方は、とても美しい。
特に目新しい訳では無いけれども、会場の中で唯一、長くその場に佇んでみたい思える空間であった。
床に敷き詰められた楠のフローリングは、暫しその香りを堪能してしまいました。
家具の家:無印良品×坂茂
構造体として用いた家具の扉の一枚を開けたら、中にさりげなく御本人の作品集が収納されていたのは、御愛嬌。
ま、無印良品はあまり好みではないので、これもサラリと見て回るに留まる。
外部を間仕切る複層ガラス入りの木製引き戸は重過ぎ。
初動荷重を軽減させるアシスト機構を備えるべきでしたね。
極上の間:TOTO,YKK AP×成瀬友梨,猪熊純
大小さまざまな矩形の開口をランダムに穿ったキューブってのは、数年前に嫌というほど流行ったデザイン。
何だかイマサラ感が思いっきり漂う。
所々に施された壁面緑化と真っ白なキューブのコントラストは鮮やかだけれども、この空間、実際に屋内に作ろうものなら、余程空調換気に留意しないと湿度が高くなって大変だろうな。
編集の家:蔦屋書店×東京R不動産
既築の集合住宅をスケルトンまで還元し、そこに新たにインフィル部材を自由に付加する提案。
そのインフィルパーツのショールームまでをも作り込んだ展示は、プレゼンとしてはなかなか徹底している。
でも、ここまで突っ込んだものでは無いにしろ、内装部材を自由に選択する販売手法の採用事例は既に数多存在し、特に目新しいことでもない。
しかも、入居者個々人の嗜好に基づき様々な内装の“編集”を可能としているように演出しつつ、その展示内容は随分と恣意性に満ち溢れている。
ということで、見分不相応にも言いたい放題ですね。
でも、それくらい心に響くものがあまり無いまま、会場をあとにすることとなった。
そんな中で、隈研吾による会場構成だけは、少々印象に残った。
高さを変えつつ場内に張り巡らせた木格子によるウォールは、御本人の設計によるスタバ太宰府天満宮店や、プロソリサーチセンター辺りで実施した意匠を応用したインスタレーションといったところなのでしょうか。
ライトアップされた夜景はきっと綺麗なんだろうなと思いつつ、その夜景を堪能出来るであろう時間帯まで滞在する気にもなれず、入場から小一時間程度で退場と相成った。