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住宅メーカーの住宅
継承と変容の総括:ミサワホームSW型
1.内外観

1983年7月21日発表。
先行モデルであるSIII型からS型NEWに見受けられた商品体系としての流れよりも、むしろそれ以前の要素が内外観に色濃く顕れたモデルだ。


写真1:外観*(佐倉市建設モデル)

このモデルのプラン上の最大の特徴は、リビング(L)とダイニング(D)とキッチン(K)との間に設けられた、二重の間仕切りだ。 図1の平面図にも、破線でその位置が示されている。 また、実際の状況は写真2の通り。
オプション設定の造り付け家具や撮影用の什器類の配置が過剰であるため詳細が確認しにくいが、食卓の奥に設けられたカップボードの手前と背後に、その仕切りが存在する。
手前のものは、約二間幅の三方枠で形成され、左手の小壁を挟んで更に左側にも半間幅の三方枠が付く。 そして背後のものは、上枠の位置が手前の三方枠の上枠よりも低く抑えられた垂壁状になっている。


図面1*:平面図(SW30-2W-Bタイプ)


写真2*:LDK内観

半間幅の離隔をもって並行に設けられたこの二重の間仕切りにより、LDKの境界が曖昧になる。 以下、カップボードの手前の間仕切りを区画A、背後のものを区画Bとしよう。
構造的な必要性からいえば、区画Aのみで十分であろう。 空間的にも、S型NEWと同様、DKとLという間仕切り方であれば、区画Aのみで事足りる。 一方、区画Bは台所の空間領域を規定していると受け取れる。 つまり、二重の区画により、空間の捉え方として、「L+DK」と「LD+K」という両義性が生じる。
ここで曖昧になるのはダイニングの領域規定だ。 物理的には、食卓設置想定箇所の直上に区画Aが横断することになる。 実際、写真2ではそのようになっている。



2.帰結、あるいは総括
※1
ミサワホームコア350のページに掲載した平面図参照。


※2

写真3*2
廊下部分。
10年以上を経て辿り着いたジョイントスペースの変容形。 ミサワホームS型のページに掲載した廊下部分の写真と比較すると、インテリアの洗練が判る。

なぜ、このような変則的な空間構成を採用したのか。
表面的には、LDKを穏やかに間仕切りつつ、空間に広がりをもたせようとしたのかもしれない。 しかし、それ以上に企図されたのが、このモデルの源流であるミサワホーム・コア350への回帰だったのではないか。 そう、ジョイントスペースを介してコア工法とパネル工法を並置する構成原理がもたらす二重の間仕切り※1が、意味と形を変えてここに復活したのだ。

そういった視点で内外観を再検証すると、原点回帰と解釈可能なディテールが散見されることに気づく。
例えば、一階と二階の積層のされ方や面積的な関係。 シャッターではなく引き戸形式の雨戸。 階段の取り付き方。 4.5尺幅の廊下※2。 北側に一列にまとめられた水廻り等々。
そして勿論、単なる原点回帰のみではない。 内外観は、O型やM型といった同社の当時の主力商品群(GOMASシリーズ)の各モデルで鍛え上げられ洗練されてきたディテールやテクスチュアで満たされている。 一階南側の三室続き間も、SIII型からS型NEWに至るモデルチェンジの流れに与する(写真4)。
回帰と変容の両義性が、ここに顕然した。


写真4*:リビングから和室の続き間

SW型は初期GOMASシリーズの中では最後に発表された新規開発モデルでもある。 翌年にA型チャイルドとO型チャイルドが相次いで発表されているが、いずれも同系列の既発表モデルをマイナーチェンジしたものに留まる。 それ以降の同社の動向は、自由設計へと軸足がシフトする。 また、企画住宅についても、GOMASシリーズの枠組みとは異なる内外観で構成されるようになった。
そんな流れを鑑みるならば、同社にとっての一つの時代の区切りとして、このSW型が位置づけられる。 住宅の工業化に向けた様々な構想を多様な形へと具現化した揺籃期の昭和40年代を受け継ぎつつ、GOMASシリーズによって大いなる展開を果たした昭和50年代の中で継承と変容の折衷を繰り広げてきたモデル群の帰結、あるいは総括。
それがこのSW型なのだ。



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引用した図版の出典
*:ミサワホーム

2009.12.26/記