日本の佇まい

INDEXに戻る ニシン漁家建築:茨木家中出張番屋


所在地:
小樽市祝津3丁目

現況:
2010年に再生工事実施。
期間を設け公開(要確認)。

写真1:外観


※1
多くの漁村集落において、この集落構造が確認できる。

※2

写真2
連子格子詳細

※3

写真3
建物左手の開口部廻り。
写真2と比べると、意匠の扱いが明瞭に異なる。

祝津は、ニシン漁場として古くから栄え、いくつもの漁家が施設を構えた。 その集落構成は、海に対して間口を狭く、そして奥行きを深く取る敷地割りが採用され、今日もその名残を留める。 そして、その敷地形状に合わせて番屋や付属施設を建てるため、海に対して奥行き方向に施設を配棟する形式が基本となっている※1
ところが、崖地が迫る条件などから、妻側ではなく平側を正面に向けるものも散見される。 例えば、別項の旧白鳥家番屋がそれに該当する。 そして、同じ通りに面して建つこの旧茨木家中出張番屋も、海に面して正面を向けている。

正面の右寄りに、切り妻破風を構える玄関が設けられている。
その右側部分は、連子格子の連なりが繊細な情緒を醸し出す和風の意匠(写真2※2)。 この連子格子の開口部は妻側にも連続し、窓下の持送り部材には唐草文様が彫り込まれている。
ところが、玄関の左側は雰囲気が一変する。 下見板張り仕上げの外壁に内部用途に応じた窓が設けられているだけの簡素な構成だ。
ここでも玄関を境に左右で全く異なる意匠が施される番屋建築の特徴がよく顕れている。
勿論これは、概要のページに記載した番屋建築特有の内部空間構成がそのまま外観に表現された結果だ。 向かって左手が傭漁夫達のスペースで右側が網元の居住空間となっている。
その空間の上に大きな寄棟屋根が組まれ、更に切妻屋根のケムリダシを載せる。

私が初めて訪ねた時点においても、既に無人の状態であった。 玄関はベニヤ板で塞がれていたが、その他の開口部は格子が設置されているためか一部を除いて旧態を遺している。
ピットの粗い竪格子が嵌められた傭漁夫側開口上部の軒先ぎりぎりのところに、更に小窓が一定間隔で設けられている(写真3※3)。 上層のネダイの採光と換気を確保するためのものだ。

背後の崖地の上には恵比寿神社があり、この番屋の右袖にその参道と鳥居が設けられている。 また、写真1の向かって左隣に本家住宅がある。



2007.05.12/記
2010.11.27/建物名称改訂
2011.08.21/現況欄改訂