日本の佇まい

INDEXに戻る ニシン漁家建築:旧白鳥家番屋(祝津)


所在地:
小樽市祝津3丁目

竣工:
1877年頃

規模:
1階;342.5平米
2階;70.6平米

特記:
小樽市指定歴史的建造物
小樽市都市景観賞受賞

現況:
1995年に再生工事実施。
郷土料理店として活用。
(但し、2010年6月に閉店)

小樽市西部に立地する小樽水族館の駐車場の入り口付近に、建物の正面を海に向ける形で建っている。 別項の旧青山家出張番屋は、この建物のすぐそばに建っていた。
写真1を撮影した時点では既に長年に渡って無人の状況にあり、開口部は全てベニヤ板で塞がれていた。 しかし、屋根や下屋、そして開口部や二カ所の玄関等々、外観を構成する諸要素がとても美しいプロポーションで配置されていることは、この画像からも確認出来よう。


写真1:外観(改修以前の状況)

むくり破風を冠した二カ所の玄関は、左が網元用で右が傭漁夫用であった。 つまり内部構成は、建物の左側が網元の住居スペース、右側が傭漁夫達のダイドコロ空間となっている。
この玄関は双方とも高さが抑えられている。 強い浜風を避けるためという説がある。 理にかなってはいるが、そのような機能的要請と同時に、外観構成上のバランスからもこの高さが設定されたように思えてならない。
網元用玄関の左右の開口部は出窓形式となっていて、その下端の持ち送り部材には全て繊細なボタン唐草が彫り込まれている(写真2)※1

一時期、この番屋を取り壊して観光客用の公共トイレを設置するという計画が持ち上がった。 しかし除却は免れ、更にはこのことを機に郷土料理店(群来陣)として改修が施され、外観は旧態を取り戻した。
竣工当初の用途を為さなくなった建物が存在し続けることは、今の日本では非常に困難なことだ。 この番屋は、商業施設として使用されるために内部は大きく改変されたが、動態保存※3による物理的な保全が実現したことを素直に喜びたい。

※1
出窓下持送り部分詳細

※3
千葉七朗著「写真集 小樽の建物(1979年発刊)」には、この番屋が食堂として使用されている写真が載せられている。 過去にも、別用途に転用されていた時期があったことになる。

※3
竣工当初とは別の用途で使用しながら建築を保存する手法。 これに対し、博物館や郷土資料館等で保存することを静態保存という。


参考文献:
建造物緊急保存調査報告書第13集<北海道教育委員会>

2006.07.08/記
2007.01.20/レイアウト改訂
2011.08.21/現況欄改訂