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不可解なモデル.04:ミサワホームAIII型

1983年2月5日発表。 愛称は“ミサワホームArt”。 当時のミサワホームの企画型商品5系列のうちのA型系列に位置づけられたモデル。
この系列では、ミサワホームA型二階建てが1977年12月に発表されている。 しかし、AIII型は先行するこのモデルとは全く異なる内外観。 むしろ基本的な形式は、ミサワホームO型の系列に近い。 だから、「何でA型?」という印象を持つことになる。 それがこのモデルの位置づけを曖昧にする。


写真1:*外観

外観は、開口部廻りと室外機置場について、それまで多くのモデルで採用されてきた共通ディテールとは異なるデザインが採用された。
当時の同社のトレードマークであった窓廻りの木調鋼製化粧竪枠が無くなった。 また、同じく木調だった雨戸シャッターケースが単色に変わった。 室外機置場は、FRP製のボックスに複層塗材を厚吹きしたものから竪格子を用いたものに変更。 台座の下部にアーチを設け、ファサードに表情を与えている。
その後の幾つかのモデルでも、この新規ディテールが採用された。 そのことを鑑みると、同社のデザイン潮流の小さな変移点に位置すると言えなくもない。 しかしその外観は、A型系列というよりは、「カワイイO型」といった雰囲気。


写真2:*
リビングダイニングキッチン内観


図面1:*内観アクソメトリック(AIII35-2W-Cタイプ)

平面プランの構成もO型に類似する。
大きな違いはキッチンの位置と大黒柱の有無。 O型のアイデンティティとして玄関吹抜けホールに堂々と屹立する大黒柱は、「カワイイ」モデルには不似合いなので外した。 キッチンも、独立させずにリビングダイニングの中に「カワイイ」感じにレイアウトした。 その様に解釈すれば、これはますますO型の「カワイイ」版だ。

LDKを一体に扱うことの是非は好みに拠ろう。 A型が若年層をターゲットにしていることを鑑みるならば、調理中でもリビングに居る子供の様子が判るように、一体の空間として扱ったという設計意図の読み取り方があろう。 しかしそれならば、キッチンセットを背面配置するのは如何なものか。 対面式かアイランド型の方が、意図をより明確に出来る。 ともあれ、キッチンの移動により、サニタリー廻りがO型よりも整理された。
和室の床の間と洗面室の関係も、O型に比べると素直になっている。
でも、自由な発想で斬新な空間を具現化したA型二階建ての個性は、ここには無い。 カワイイO型として、どこか立ち位置が中途半端な、そんな印象のモデルだ。

1984年4月21日、このモデルはマイナーチェンジをして名称を「ミサワホームA型チャイルド」に変える。
カワイイから「チャイルド」と命名した訳ではない。 子育てを中心に考えた商品開発ということで、名付けられた様だ。
そこでは、子供の行動原理の基本は「円」という発想から、円運動を動線計画に盛り込んだ「サーキュレーションプラン」という概念が採用されている。 といっても、厳密には既存のプランに概念を当て嵌めてみたという程度。 むしろ、翌月の5日に発表された「ミサワホーム・チャイルド」の方が、より一層の概念の深化を図っている。
ここでも、このモデルは中途半端な位置づけに留まった。



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*引用した図版の出典:ミサワホーム

2011.05.28/記