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以降の奇跡の推移:ミサワホームOIII型/O型Child
1.O型NEW以降
別項のミサワホームOII型/O型NEWがO型の完成形と書いた。 その中でも敢えて個人的に一番と思えるものを選ぶと、O型NEWのエクストラ仕様ということになる。 茶系に統一されたインテリアのカラースキーム。 それまで独立型であったものを少しの形態操作でダイニングルームとの対面型に置換したキッチン。 その他、細かく配慮された仕様設定等を鑑みると、「三世代同居」というテーマを和魂洋才の意匠で実現する初期開発思想が最もバランスのとれた姿で実現したのがO型NEWエクストラ仕様という印象だ。
しかしそれは、以降のモデルチェンジがつまらないものになってしまったということではない。 O型としての初期の基本形式を維持しつつ、市場動向に応じながら柔軟な変容を試みつつ更なる展開が図られるに至った過程を以下に記載する。


2.OIII型
※1
別項の「ミサワホームOII型/O型NEW」にも書いたが、O型はオプションで半地下室を設けることが出来る。 そのため、このサンロフトを含めると4層構成の住空間を造りだすことが可能になる。
当時の企画型住宅としては破格の構成といえるであろう。

※2

写真2*
勾配天井による豊かな空間を持つ北側の居室にロフトが直接面している。 ロフト上部に設けられたハイサイドライトにより南側からの自然光の採り入れを可能にしている。

※3

写真3*
手前が寝室。 両引き分け扉の向こう側が「サルーン」。 合わせると約18畳という豊かなプライベート空間。

1982年9月21日、O型NEWの後継モデルとしてOIII型サンロフトが発表される。
初代O型以降採用され同モデルの特徴となっていた寄棟に越屋根が載る形式とは異なる屋根形状を採用(写真1)。 棟の方向を90度回転させ勾配を急にし、その頂部にハイサイドライトが二つ並べて設置された※1


写真1:OIII型サンロフトタイプの外観*

それぞれのハイサイドライトの下には、モデル名称にもなっている「サンロフト」と呼ばれる広さ二畳半のロフトが設けられ、北側の二つの居室に連結している。 従って、この二部屋はロフトを介して南面採光が確保される(写真2※2)。

また、O型NEWまでのプランに組み込まれていた二階南面の二つの居室は、一方の和室が廃止されて洋室の続き間となり、主寝室と「サルーン(写真3※3)」と呼ばれる余暇室が設えられた。 余暇を豊かに過ごすための夫婦のための第二のリビングという位置づけだ。
この空間構成によって三世代同居というそれまでのテーマはやや後退した。 多世代向けに独立性の高い居室を多く確保することよりも、核家族が余裕を持って暮らしを愉しむ方向に思想が変質したことを、このサルーンが物語っている。
また、このモデルチェンジにおいては和洋の絶妙な融合という当初のO型の外観デザインの特徴も薄らぐこととなった。 急勾配屋根の採用とサンロフトの設置により、洋風の要素が強まっている。

サンロフトモデルの発表から二ヶ月経った11月21日、従来の寄棟屋根形式のOIII型も発表。 サンロフトモデルで改訂・採用された数々の先進仕様を共有しつつ、今までの内外観形式も引き継がれることとなった。



3.O型Child/CHYLDER O1
※4
この年、ミサワホームではこのO型Childに続き、A型ChildとミサワホームChildを相次いで発表。 この三つのモデルにより、住まいにおける子育てのあり方を提案したのだ。
※5

写真2*
続き間となった子供部屋

※6

写真5*
ミサワホームChild外観
1984年5月5日発売。
それまでのミサワホームの企画住宅シリーズのデザインと一線を画すデザイン。 安全面や情操教育や孤室化の防止等、その取り組みと提案は徹底している。

1984年3月7日発表。 子育てを主眼に据えたモデルとして仕様の見直しが施された※4。 具体的な手法としては、子供の行動原理が円運動であることに着目したサーキュレーションプランの提案と、子供部屋の孤室化の回避だ。


写真6:O型Child外観*

サーキュレーションプランとは、行き止まり無く子供が巡ることが出来るプランのこと。 これはO型自体が、その当初から玄関ホール−リビング−ダイニング−キッチンの動線において採用されていたものを、サーキュレーションプランと見なしたというところ。
そして孤室化の防止については、二階北側の洋室を続き間にしたことが挙げられるだろうか(写真4※5)。
いずれも、子育てに対する配慮条件を、O型の既存プランに当てはめてみたという程度である。 逆に、O型のプランそのものが様々な解釈に対し適用性があるとも言えよう。
とはいえ、二ヶ月後に発表されたミサワホームChild※6に比べると、その意識や形態的な工夫は少し弱い。

変化という面で注目すべきは、内観よりも外観である。 それまで同社の他の企画モデルにも共通して採用されてきたフラワーボックスのデザインが一新された。
凹凸がデザインされたFRP製吹き付けタイル仕上げのものから、竪格子手摺りを用いた開放的な表情のものに変わっている。 また、軒樋や越屋根の棟部分のデザインが角形となることで、よりシャープな印象になった(写真6)。
商品体系の大幅な改編に伴い、同モデルは翌年名称を「CHYLDER O1」に変更している。

ここまでが、昭和50年代におけるミサワホームO型シリーズの推移になる。 60年代以降の動向については別途ページを改めて記載する。



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*引用した図版の出典:ミサワホーム
2007.04.21/記
2011.06.19/発売日の詳細等、一部追記・改訂
2013.10.20/写真2追加,構成調整
2016.07.02/文章・構成改訂