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住宅メーカーの住宅
余暇時代への憧憬:ミサワホームM型2リビング
1.概要:来るべき余暇時代を志向したモデル
※1
異色といえば、外観(写真1)にも当て嵌まる。
和洋混交を基本とした外観デザインの多い当時の同社企画住宅商品群の中にあって、このM型2リビングは南欧風だ。

※2
当時ミサワホームから発表されていた企画住宅商品群の魅力の一つは、来るべき社会環境を的確に捉え、それを明快に空間化していた点にある。
例えば別項のSIII型は、省エネルギー問題に対する1980年代初頭の一つの解答であったし、OII型は核家族化への反省が込められていた。

M型2リビングが発表された1981年当時は、まだ週休二日制が一般的では無かった時代である。
しかし、近い将来その制度が一般化し、それにより生じる余暇を充実させるにはどの様な住環境が求められるか・・・。
この設問に対し、余暇のための二つめのリビング=「余暇室」を備えた異色のモデル※1が登場した※2


写真1:外観*
2.内観
2-1:もう一つの「ハレ」と「ケ」
※3
MIII型/M型NEWの項参照

※4
M型2リビングには、リビングが2室あるプランの他に、インナーガレージを設けたプランも提案されていた。
規格プランは、2リビングモデルが2種類、インナーガレージモデルが2種類、それぞれ東西反転プランを擁する8タイプが用意されていた。

別項のMIII型は、建物の中央を東西に通る中廊下を介して「ハレ※3」と「ケ※3」を分けたプランであった。
同様にM型2リビングの一階部分も、東西に貫通するホールにより南北に諸室が振り分けられている。 そして、南側は「ハレ」の空間として「余暇室」と名付けられたフォーマルなリビング(写真2)が設けられ、北側には「ケ」の空間としてリビングとダイニングとキッチンを一体にしたファミリールーム的なもう一つのリビングが設置されている※4


写真2:余暇室*

南側の「ハレ」と北側の「ケ」という空間構造はMIII型と共通しているが、その分割の意識については大きな違いがある。 M型2リビングは、家長制度的な公私の区分けではなく、「余暇」を意識した区分けなのだ。

2-2:練り尽くされた緻密な平面計画
補足.1
2階のプランを見ると、階段の位置がSIII型と同様に北側中央配置であることが読みとれる。
更には階段の左右に2室、その南側に2つの部屋が接続される骨格もSIII型と共通する。

※5
写真3*

南面からの日照取得を可能にした北側の和室。
別項に掲載している向日葵の洋館の和室の画像と比較すると面白い。
同様に凸型の平面形態を採用しているが、向日葵の洋館の和室は三角形の広縁という緩衝帯を介して南側に面している。
     

プランについて検証してみる(図面1)。
1階中央部分を東西に貫通するホールは、その両端が大きなガラス面を伴った玄関と勝手口に充てられている。 これはホールに実際以上の広がりを与えるのに有効であろう。
また、玄関の前に鋳物製の門扉が設けられ、来訪者は、門扉→ポーチ→玄関ドア→玄関 を通過してホールに至ることになる。 これも、エントランス空間に実際以上の奥行き感を与えるのに有効な手立てである。
更に、2階に昇る階段を少しだけホールに垂直に貫入させることでホール自体に変化を与えると共に、その奥に配置された洗面所への視線をカットしている。


図面1:各階平面図*(M2L49-2W-Bタイプ)

比較的複雑なプランにもかかわらず、壁配置に関する構造的な整合性に破綻は見られない。 また、設備的にも全ての水廻りが一カ所に集中して効率的にまとめられている。
ほかにも、2階に豊富な収納が確保されていることや洋風のイメージの中に和室※5を1室確保することも忘れていない等々、実に良く練られたプランだ。

もう一つの特徴として、南北に部屋が振り分けられる形式でありながら、北側の居室も南に面しているという点が挙げられる。
手法として、平面形状を凸型にすることが採用されている。 北側の居室を南側の居室よりもそれぞれ東西方向に拡張し、その拡張部分にコーナー出窓を設けることで南面からの採光を可能にしているのだ※5

3:余暇時代への憧憬と現実
※5
実際、広告写真の中には、正装に靴履きという格好の数組の男女が余暇室でホームパーティーを繰り広げているシーンが有った。 開発者サイドとしてもその様な使われ方をイメージの一つに描いていたのであろう。
M型2リビングが発表されて既に四半世紀以上の年月が経ち、週休二日制も広く一般に定着して来た。 しかし、ハイグレードなしつらえを施した「余暇室」を有する2リビングという形式が、住宅様式の一モデルとして一般化しているとは言い難い。 むしろ、家族の共用室としてのリビングの用途や存在意義は徐々に曖昧になっている。 余暇そのものの考え方を含めた住宅を取り巻く価値観が、1980年代初頭に描かれた憧憬※5とは乖離しているのかもしれない。


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*引用した図版の出典:ミサワホーム

2006.07.08/記
2006.09.02/和室の画像と補足文を備考欄に追記