日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです
町並み紀行
建築探訪
建築の側面
建築外構造物
ニシン漁家建築
北の古民家

間取り逍遥
 
INDEXに戻る
住宅メーカーの住宅
もう一つの基本形:セキスイハウス・グルニエのある家
1.概要
※1
建物名称として、2BK−V型という記号も用いられていた。

1978年1月の発表以降、積水ハウスのロングセラーモデルとなった住宅※1
屋根の頂部に、モデルの名称になっている「グルニエ」が設置されている。


写真1:外観*

グルニエとは屋根裏部屋のことであるが、ここでは採光や給排気の機能を持たせている。 このグルニエと五寸勾配※2のおおらかな寄棟屋根、そして二階の開口部廻りに設けたフラワーボックスのデザインのみで、小粋な洋風の外観を表現している。
他の要素としては、雨戸とサッシと鋼製外壁パネルのみ。 このシンプルな構成によって、飽きのこない秀逸な外観を造り出している。

※2
水平長さ一尺に対して高さが五寸となる勾配のこと。 角度に換算すると、26.6度になる。


2−1.プラン(1):概要
※3
写真2*
独立した和室の内観。
踏込み床と吊り押入を組み合わせ、地窓を配している。 床柱に錆丸太、落し掛けに図面竹を用いた床の間のしつらえは、簡素な味わい。 地板を南面の掃出し窓側に矩折りに廻し、空間に広がりを与えている。

※4
写真3*
リビングルーム内観。
右手にダイニングルームに至る開口が見える。

基本的に自由設計であるが、いくつかのパターンが設定されていた。 その中の代表例が図面1となる。


図面1:プラン事例*

玄関を入ると、一方(図面の向かって右側)に独立したフォーマルな和室が設けられている※3。 この部分は平屋建て。 そして玄関を挟んだ他方は、ほぼ総二階の造りになっている。 1階にパブリックな空間、2階にプライベートな空間を設定。 1階部分は、リビング※4とダイニングとキッチンがL字型にレイアウトされている。
このL字以外の北側エリアに階段や水廻り等のサービススペースが配置される。

これが、主だったプランの構成要素である。



2−2.プラン(2):もう一つのスタンダード型
※5
図面2
プラン形式の概念図

※6
写真5*
「数奇屋」外観例*
平面プランの類似性が外観デザインにも顕れている。 玄関を含めた総二階部分の片側に和室を配した平屋が接続する構成に、写真1との共通性を見い出せる。

このプラン形式※5は、「グルニエのある家」以外に同社から同時期に発表されていた他のモデルにも採用されている。
例えば1982年4月に発表された「入り母屋の家」も、この平面形式に当てはまる。 また、1983年4月発売の「数寄屋」というモデル※6においても、この形式に属する間取りが提案されていた。
共通の平面形式を採用しながら、全く異なる内外観を実現しているところが面白い。

応用例として、下屋を省略した総二階建てという形式もある。 また、リビングとダイニングを図面1の様な半独立形式ではなく一体の空間とし、更にその中に和室を設ける例もある。
このように、基本な骨格を用いながらも設定条件により様々な応用が展開可能になっている。

更に、この形式は積水ハウスのみならず、同時期に発表されていた他メーカーのモデルにも確認することが出来る。
果たして、そのオリジナルが「グルニエのある家」であるのか否かは定かではない。 但し、この形式でロングセラー製品として定着した代表格は、このモデルということになろう。

一般化したプラン形式というと、別項のミサワホームのO型シリーズに見受けられる田の字の中央に廊下が貫通する形態が挙げられる。
「グルニエのある家」のプランも、もう一つの一般化した形式といえそうだ。



INDEXに戻る
*:引用した図版の出典:積水ハウス

2007.06.09/記