日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです |
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建築外構造物
筒石駅 |
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JR西日本北陸本線内の駅であるが、一言で述べるなら「不条理な駅」ということになる。 そして、その不条理さこそが魅力である。
海沿いに面した小さな集落の外れで山側に向かって分岐する道路に歩を進める。
人家はすぐに途切れ、左手に渓谷を望む上り坂のみの山道を1kmほどひたすら昇ると、やがて小さな建物が見えてくる(写真1)。 駅舎の中に入ると待合室があり、奥に改札を兼ねた出入り口が見える。 その改札を通り、駅舎の裏手に出ると、正面に半透明な波板のポリカーボネートの壁が互い違いに立ちはだかる。 その間を抜けて前方に進むと、地中に向かってぽっかりと口を開けたトンネルが眼前に顕れる(写真2)。 |
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写真1: |
写真2: |
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一直線に下降する224段の階段が、地下に向かって延びている様は、圧巻だ。
トンネル内はコンクリートが剥き出しのまま。
地下に向けて階段を下りる途上では、壁面のところどころに地下水が染み出し、無機的な蛍光灯が冷たくそれらを照らし出す。
奥の闇からは、明らかに地上とは異なる空気が流れてくる。 |
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写真3: |
写真4: |
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自らの歩行音が不気味に反響するトンネル内を進むが、それでもまだホームには辿り着かない。 |
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写真5: |
写真6: |
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待合スペースの先にアルミ製両面フラッシュの引き戸があり、その引き戸を開けると、そこも巨大なトンネル内(写真7)。
突如、踏切警報音の様な信号音が、構内に鳴り響く。
通過列車だ。
この幅の狭いホームで列車の通過をやり過ごすのはちょっとキツイなと思い、待合スペースに退避。
ということで、快適性とか合理性といった概念からは全くかけ離れた駅である。
そのあたりが不条理ということになるが、しかしよくよく考えてみると、構造的にはそれほど特殊という訳でもない。
例えば、この駅の構成を数字で表すと、改札からホームまでの高低差が40m。
その距離が、上りホームまで212m、下りホームまで176mとなる。 そんな駅構内を体感すると、地上の小振りな駅舎はホッと一息つける空間だと認識させられる。 駅員の方々の対応も穏やかで丁寧。 交代で24時間年中無休の常駐体制を敷き、駅の窓口業務のほか、列車到着時の安全確認や乗降客の案内、構内のメンテナンスに当たっているという。 |
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2009.10.31/記 |