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間取り逍遥
集合住宅.06:二通りの解釈

物件データ

構造:
RC造7F

築年月:
1975年2月

総戸数:
40戸

専有面積:
89.96平米

バルコニー面積:
9.19平米

住戸内用途によるエリアの区分け方法で二種類の解釈が可能な間取りである。 その分け方は、平面図.1にある通り、A1とB1、A2とB2だ。

平面図.1

A1とB1というエリア分けは、居室と非居室の用途の違いによるものになる。 B1に居室以外に住宅に必要な要素全てが集中配置されている。 そしてA1は全て居室の用途だ。
別項の物件No.05とは異なり、キッチンセットも非居室のエリア内に配置されることで、より区分けが明確だ。 1960年代のメタボリズム信奉者達や、1970年代の一部のハウスメーカーであれば、このB1部分をA1部分に容易に着脱することが可能な一体化されたカプセルとし、設備系統の更新性を高めたシステムを構築したことであろう。 そして、このB1の存在により、A1のエリアは自由な部屋のレイアウトが可能になる。 その制約は、物件No.05と同様僅かな項目に限られる。

一方、A2,B2というエリア分けは、かつての古民家の形式に基づいたものである。 すなわち、A2を田の字配置された居室群、B2を土間と見立てる構成だ。
前述の間取り可変の自由性に基づき、この集合住宅が立地する千葉県内のかつての平準的な古民家の形式に組み替えると、平面図.2の通りとなる。

平面図.2

ザシキには押板と仏壇を、オクノマには床の間をしつらえた。 更にB2エリアも、玄関と一体の土間風に扱っている。 そして、ザシキとドマの境界に大黒柱を立てれば、集合住宅という現代のフレームの中に、伝統的住居形式が挿入されることになる。

メタボリズムと古民家。 全く異なる方向性の読解が可能であることが、この間取りの面白いところだ。



2009.09.05/記