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住宅メーカーの住宅
日照取得への拘り:イワタニハウス・向日葵の洋館
1.概要

1982年に発表。
名称からイメージ出来る通り、日当たりに対する工夫を凝らしたモデル。 手法として、全ての居室を南面させるためのT字型平面と、北側の空間への採光を確保するためのハイサイドライトの採用が挙げられる。



2.外観


写真1:外観*

妻側の軒を省略した片流れ屋根を拝み合わせに納め、その両翼に少し奥まる形で寄棟屋根のブロックを組み合わせた個性的なプロポーションが形成されている。(写真1)
片流れ屋根の頂部にはハイサイドライトが並べられ、採光と換気の機能を担う。 2階南面のバルコニー手摺りも透明なパネルが採用され、内部への日射取得率を高めている。
白一色でまとめられた清楚で明るく健康的なイメージの外観だ。



3.断面
※1

写真2*
ハイサイドライトと組み合わされたロフト。
図面1の断面図とは左右逆のアングル。 左上部にハイサイドライト。 右手の開口を介して階下の二階ホールに南面採光をもたらすと共に、更に階段を通して一階にも自然光が届く。

ハイサイドライトの下にはロフトが設置されている。
ロフトへのアクセスは、2階の天井内部に格納された折り畳み式のハシゴによる。 日差しが燦々と降り注ぐ部位なので、単なる屋根裏収納庫にしておくのはもったいない空間だ(写真2※1)。
このロフトから吹抜けを介し、階段や1階の玄関ホールへの採光を可能にしている(図面1)。


図面1:断面図*

惜しむらくは、ハイサイドライトからの採光が、居室にも有機的に関連づけられていれば、日照取得へのこだわりというテーマをより鮮明にすることが出来たのではないか。



4.間取り
※2
12種類の規格プランが設定されていた。
北側の居室にも南面からの日照を確保するため、北側半分を南側よりも東西方向に出っ張らせたプランを採用している(図面2)※2。 メーカーではこの形式を「T字型設計」と呼称していた。 T字状に左右を拡張させることで、北側居室に南面する部位を設けることが可能となる。


図面2:各階平面図*

この手法は先例として、別項のミサワホームM型2リビングが挙げられる。 しかし、M型2リビングが南に面した北側居室の壁面にコーナーサッシを設置する納まりであるのに対し、向日葵の洋館ではその壁面を45度に振っているところが異なっている。
この形態操作により、内外観に変化を与えている(写真3)。 また、角度を振ることにより、近隣や道路からのダイレクトな視線をかわすことが可能になり、プライバシーの確保にもなるであろう。 更に、45度の振れによって生じる三角形平面のスペースは、サンルームや和室の広縁等に充てられている(写真4)。

写真3*
リビングダイニングルーム
奥の開口部が45度振れている。 空間に変化が造り出されているのと同時に南面以外の角度からの日照確保も可能にしている。
写真4*
北側の和室
奥に三角形の広縁が設置され、南面からの採光を確保している。
別項のミサワホームM型2リビングの和室の写真と比較してみると、設計思想の違いが判る。


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*引用した図版の出典:イワタニハウス

2006.07.08/記
2006.09.02/和室の画像と補足文を備考欄に追記