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住宅メーカーの住宅
六層構成の住空間:第一木工−ギャラリーII
1.概要
備考:
商品名から判るように、先行モデルとして「ギャラリー」が1979年に発表されている。 スキップフロア形式は採用されていないが、外観には類似性がみとめられる。

1981年に発表されたツーバイフォー構造の住宅。
外観からは、二階建てに屋上バルコニーを載せた住宅のように見えるが、実際には1階の半分、すなわち半層ずつにレベルが設定された六層構成の住宅。 建物を南北に二分割し、それぞれを半層ずつずらしたスキップフロア形式のプランが提案されている。


写真1:外観*

       
2.間取り
各層の構成は以下の表1※1と図面1の通り。
細分化されたそれぞれのフロアを、家のほぼ中央に配置した階段により連結している。 0.5層の収納部分は、オプションで半地下室とするオプションも設定されていた。
※1
表1:各層の構成

図面1:各階平面図*(A33-2W-Cタイプ)
0.5層(北)
・地下収納
1.0層(南)
・居間
・和室
1.5層(北)
  
・食堂
・台所
・水廻り
・玄関
2.0層(南)
・主寝室
・子供室A
2.5層(北)
・子供室B
・子供室C
3.0層(南)
・屋上


3−1.内観(1)
1.0層のリビングと和室の間に食い込むように、半層ずつ昇降する階段が並列配置されている。 また、半層分ずれた居間と食堂が大きな開口でダイレクトに連続している。 スキップフロア形式の特徴が日常生活の中で具視化された場所だ。
居間と食事室が連結することで空間的な広がりが得られると同時に、レベル差があることによりお互いの独立性も確保されている。
写真2*
リビングルーム
奥の右手の白い壁に、ダイニングルームに繋がる開口が半層分高い位置に設置されているのが見える。

これらの間には奥行き半間、幅1間半の広さを持った1.5層相当の吹抜けが設けられ、空間の連携が強化されている。 この吹抜けは、直上の子供室AとBの間のレベル差によって作り出すことが可能になった。
また、主寝室と子供室Cの間のレベル差を利用し、子供室Cにはロフトが設置されている。
写真3*
子供室C
向かって右手にロフトが設置されている。 このロフトの下部には主寝室の一部が位置する。



3−2.内観(2)

半層ずつ昇降する階段は折り返し形式となっており、それぞれの階段の幅は通常の半間よりやや広めだ。 日常生活の中で階段の利用が多くなること、あるいは生活の要になるという意味から幅に余裕を持たせたのであろう。
また、二列に並べられた階段の間に、約30cm程の離隔が設けられており、これが1.0層から3.0層まで貫通している。 更に階段自体も蹴上げを省略した透過性の高い形式なので、最上層に設けられたトップライトからの自然光が、階段やこの隙間を介して各層に届くことになる。

また、北側に配置されたキッチンには、トップライトが設置されている。 更にサニタリー部分は、アルコーブ状に計画したサービスヤードによってプライバシーと採光を両立させた計画としている。
このように、周囲が建物に囲まれ、敷地に余裕の無い条件下の場合でも、自然光の室内への取入れが可能なように様々な配慮がなされている。



4.スキップフロアの評価
※2

写真4
ミサワホーム555外観**
同じように南北に振り分けた諸室を、半層ごとのスキップフロアで連結するプランが採用されていた。

住棟内に組み込んだガレージの上部に中二階を設ける計画等、部分的にスキップフロアを採用するプランは現在でも散見される。 しかし、「ギャラリーII」のように、建物全体を数層にわたってスキップフロアとするプランはあまり見かけることが無い。 同時代の住宅においても、ミサワホーム555※2や、三井ホームのスペースクリエーション等、ごく一部に見受けられる程度だ。

理由としては、構造が複雑になることによるコストアップや、段差を極力排除しようとするユニバーサルデザインの思想にあると考えられる。
しかし、段差の排除のみがユニバーサルという発想はやや短絡している面もあるし、半層ごとの移動というのも逆にバリアフリーといえるかもしれない。 また、コストと空間の妙味もトレードオフの関係だ。 住まいの一形式といて、多層スキップ形式のプランももう少し評価したいところである。



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引用した図版の出典:
*:第一木工
**:ミサワホーム

2006.12.02/記
2009.09.26/先行モデルについて備考に追記