日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです |
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住宅メーカーの住宅
国家的事業の住宅:ミサワホーム55 |
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1.開発の背景:住宅に関する国家プロジェクト | ||||
1976年、高品質で低廉な住宅を供給することを目的に、旧通産・建設両省共同のプロジェクトが発足した。 そして、4年以上に亘る技術開発の成果として、1981年1月に「ミサワホーム55」が発表されることになった。 |
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2.外観:個体、あるいは群景として | ||||
※1:
写真2*2:壁面詳細 ※2: 「Autoclaved Lightweight Concrete」の略称。 工場生産による軽量気泡コンクリートパネル。 |
石積み調のパターンが刻まれた外壁※1が特徴的な外観である。
この外壁は、ニューセラミックと称する新素材で造られている。
大量供給という枠組みの中では、同じ規格の住宅が何棟も並べて建設されることも想定されよう。
その際、群体としても美しい景観が形成されることを念頭にデザイン検証がなされたのではないかと思われる。
実際、写真1でも3棟並んだアングルが採用されているが、単体でも群体でも美しいデザインを実現している。 |
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3.工法 | ||||
※3:
写真3*2 現場でのユニットの組み立て状況 |
ユニット工法が採用されている。
別項に掲げているSIII型等のミサワホームのモデル群は、木質パネル構造という形式をとっている。 |
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4.プラン:生産性がもたらす制約 | ||||
※4:
図1を見ると、等間隔に柱が配置されていることが確認できる。 四本の柱で囲われる一区画が、1ユニットとなる。 水廻りに関しては、1つのユニットの中に極めてコンパクトに納められていることが判る。 |
最初期モデルは、3タイプに東西反転を組み合わせた6種類の規格プランが用意された。
図1は、その中の一つ※4。
このモデルで採用されたユニットは、短辺寸法が2.5m弱に設定されている。
これは、工場生産したユニットを現地に運ぶ際、道路交通法の規制がかかってくることによる。
ちなみに、このことはミサワホーム55のみに固有の問題ではなかった。
ユニット工法の草創期は、他のメーカーにおいても、概ね短辺方向の幅が2.5m弱のモジュールが採用されており、似た様なプラン上の制約を背負っていた※6。 |
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※5:
ならば、1間幅(約1.8m)のユニットにすれば良いのではないかというと、そうもいかない。 ユニット住宅は巨大な空箱を工場から現地に移動させる訳だから、その殆どは空気を運んでいるといって良い状況である。 そうなると、法的に可能な最大の容量設定にて運ぶことがコスト的にも効率性の面からも求められる。 そのため、2.5m幅のモジュールが採用されることになる。 平面図の2階の和室を見ると畳のモジュールに合わない中途半端な位置に柱型が発生しているのは、このような制約が背景となっている。 ※6: 例えば、同じユニット工法を採用しているセキスイハイムの標準ユニットの短辺寸法は2464mm。 トヨタホームは2400mm(躯体芯)のモジュールが採用されていた。 |
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5.インテリア | ||||
外壁の室内側は、壁紙等の仕上げ材は施されていない。
外部と同じ多機能素材による直仕上げであるが、優しいテクスチュアの表面加工が施されている。
外装にもなれば内装にもなる多機能素材の特性を活かした構成だ。
ただし、この多機能素材が採用されているのは外壁部分のみで、床や屋内の間仕切りは木質系のパネルとなっている。
窓の両側に巨大な柱型が発生している。
また、天井面にも細い梁のような部材が横断している。
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6.ハウス55の影響:住宅市場の動向 | ||||
※7:
写真6 ナショナルハウス55外観*2 ※8: 写真7 小堀ハウス55外観*3 ※9: 写真8 ハイムアバンテ外観*4 |
工法や素材開発や生産体制の構築といった点で画期的な成果を出せたのは、ミサワホームグループのみであった。
TOPSグループは、ハニカムパネルを基本素材に用いた住宅を開発していたが、結果として1982年1月に発表された「ナショナルハウス55※7」では、床の構造材としての採用に留まった。
しかしこのプロジェクトは、その直接的な成果とは別に、住宅市場に大きな影響を及ぼした。
他の住宅メーカーから、明らかにハウス55を意識したと考えられるモデルが多数発表されることになったのである。 |
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7.ハウス55のその後 | ||||
※10:
これは何もミサワホーム55に限ったことではない。 積水化学工業から最初のユニット工法住宅として発表されたセキスイハイムM1の新奇性は日本の工業化住宅史の中でも群を抜いた存在である。 しかし、その後のモデルチェンジでは、徐々に住宅的な外観へと変質する過程を経た。 |
草創期のユニット工法による外観は、どうしてもハコの組み合わせという印象を免れない。
それを先進的と見るか、無機的と見るかは個々人の価値観による。
多機能素材についても、その捉え方が変わっていく。
現在ではこのパネルを「外装材」として用いた「ハイブリッド構造」が、この会社の鉄骨系住宅の主流になっている。 |
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引用した図版の出典
*1:ミサワホーム *2:ナショナル住宅産業(現パナホーム) *3:小堀住研(現ヤマダ・エスバイエルホーム) *4:積水化学工業 2007.02.24/記 |