日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです |
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住宅メーカーの住宅
自由造形の出発点:ミサワホーム 片流れ屋根 |
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1.概要 | ||||||
写真2* 写真1の別アングル。 このモデルは、1966年6月11日〜9月12日の期間、二子玉川で開催された「第二回プレハブ建築・建材・設備機器総合展」に出展されたもの。 |
1966年6月に発表。 ミサワホームの設立が1967年だから、前身の三澤木材株式会社プレハブ住宅部時代のモデルだ。
その当時のプレハブ住宅と言えば、物置や仮設住宅といったレベルを漸く脱却し、何とか戸建住宅らしさをその内外観に付与しつつあるといった状況だった。
とはいえ、乾式工法を基本としたその外観は、従来のいわゆる在来工法による住宅の意匠を辛うじて擬態する程度に留まり、ぎこちなさは払拭しようにないという有様が一般的であった。 |
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2.外観 | ||||||
写真3* 旧晴海総合住宅展示場に1970年頃に出展していたモデル。 バルコニー手摺の扱い等に、写真1の事例とは少々異なるディテールが用いられている。 |
名称通り、一枚の片流れ形式の屋根で構成。
深い軒の出と幅広の破風板が、力強い意匠を実現している。
勾配が高い側の妻面は、その一部を招き屋根風に葺き下ろし、変化を出している。 この部分は室内側では二階個室の物入れの用途に供されており、機能性も与えられた形態処理となっている。 その葺き下ろされた屋根勾配に合わせて、内側に少々倒れたバルコニー手摺を妻面から正面に矩折りで廻す。 その手摺を構成する横板の一枚を延長し、バルコニーの左手に連続するパーゴラの支持部材へと繋げる扱いが面白い。 バルコニーが廻された二階部分の直下は、ピロティになっていて、ビルトインガレージと玄関ポーチの用途に供されている。 この玄関廻りに施された茶系の下見板張り仕上げと、水平性を強調したバルコニーの組み合わせは、外観を引き締める要素として、意匠上きわめて重要だ。 |
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3.内観 | ||||||
片流れ屋根によって生じる勾配天井を活かし、玄関とリビング部分に豊かな天井高の空間を実現(写真4)。
その吹抜け空間の中に設けられた階段は、板を二枚組みにした簓桁と、吹寄せの竪格子で骨太の笠木を支持した手摺による構成。
玄関とリビングを軽く間仕切る竪ルーバーと共に、空間に個性を与えている。
一階の和室(写真5)は、化粧棟木に竹を用いた船底天井を採用。 床柱も竹を組合せて設えられている。 吊り押入れの襖は、大振りな市松模様で大胆に構成。 部屋にメリハリを与えている。 なお、洋間の外部開口にはアルミサッシを、和室には木製サッシを用いている。 |
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写真4*:
リビングルームから玄関ホールの方向を見る。 |
写真5*:
リビングルームに連続する和室。 |
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写真4では、竪ルーバーの奥に、二階の洋室の障子窓が取り付けられていることが判る。 屋根勾配がもたらす吹抜けを介して一階と二階の居室を穏やかに繋げる構成は、ミサワホームMIII型の面積の広いタイプにも見受けられる。 しかし、だからといってMIII型を片流れ屋根の継承形とするのは、少々強引なこじつけということになろうか。
プランはリビングを中心に計画されていて、全ての諸室への動線が交錯してしまっているところが難点。
豊かな天井高が、それを相殺し得るのだろうか。 |
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4.フリーサイズ | ||||||
※1:
写真6* かつて東京都新宿区番衆町にあった社屋前に建てられた招き屋根のモデルハウス。 右手の白い建物が社屋。これ以外にも数棟のモデルハウスが敷地内に建てられた。 |
この片流れ屋根モデルに先行して、1965年に招き屋根タイプ※1が発表されている。
屋根形状以外の諸要素は、片流れ屋根タイプと共通することが、写真6から見てとれよう。
一階中央のリビングルーム上部を屋根勾配に合わせた吹き抜けとし、そこにハイサイドライトを配置した構成は、写真1のモデルへと踏襲されている。
ここに掲げた片流れ屋根や招き屋根の事例は規格化されたものではない。
内外観にある程度の共通した特徴を付与した自由設計の一例だ。
特徴が明瞭な屋根形状を呼称として用いていたに過ぎぬ。
衣料品を中心に「フリーサイズ」という和製英語がよく使われる。
例えば、体形への対応がある程度自由な商品を差す場合等に使われるが、この言葉を造り出したのはミサワホームなのだそうだ。 |
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*引用した図版の出典:ミサワホーム
2012.05.26/記 |