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住まいの履歴
2.5番目の家:1973年5月〜

概念図
※1
参照ページ

三角屋根住宅

※2
概念図:三角屋根住宅の1階部分の構成例

※3
曳家(ひきや)

建物を解体しないで、そのまま別の敷地に移動させる技術。

新潟県の長岡市に建つ2番目の家に在住中、父が北海道に住む両親のために札幌市内に建てた家。 長岡在住の頃は帰省の際に泊まる程度であったし、その後私が札幌で過ごした5番目の家は母方の祖父母の家であったため、この家に直接住んだ期間は全くない。
にも関わらずこの場で、2.5番目という変則的な表記で取り上げるのは、1階の平面形状について言及したかったためである。

1960年代に、北海道住宅供給公社の標準的なコンクリートブロック造戸建て住宅として、「三角屋根住宅」と呼称されるモデルがあった※1。 その名の通り、屋根形状が三角の住宅であるのだが、その1階部分に採用されていた平面プランと、この2.5番目の家のプランに類似性が認められるのである。

「三角屋根住宅」のプランの特徴は、2行3列のグリッドに分割される型式によって成り立つ※2
南側の3列のグリッドには居室が3室並ぶ。
そのうち中央のマスは、リビングルームにあてられ、両脇の居室は個室の扱いとなる。
その奥の北側のマスにダイニングキッチンが連続して一体空間を形成し、さらにその左右にそれぞれ水廻りと玄関や階段等のスペースが割り振られる。
これが、「三角屋根住宅」の一般的な1階部分の平面プランだ。

2.5番目の家は民間の工務店による設計施工の木造住宅であるが、この「三角屋根」の1階部分の構成に類似している。 いわば、公社の標準型が一般に波及した事例の一つということになろう。
しかしながら、2階部分の構成は「三角屋根」とは大きく異なる。 また、屋根のかけ方も全く違い、切妻屋根の1階に招き屋根の2階が載る形式であった。
その2階東側の6畳の和室の南面にはバルコニーが設けられている。 1階の屋根勾配の関係から、2階の床面から40cmほど高い位置に設置されていたが、かつては手稲連峰が一望できた。

長い築年数を経て、地盤沈下による家の傾きなど、所々に不具合が生じていた。
2005年に曳家※3の技術を用いて基礎と土台をやり直し、設備を一新するなどの大規模なリフォームを実施。 そして、現在も親戚が住み続けている。
私にとっては、幼少期の空間体験の記憶が残る唯一の現存住宅であると同時に、両親にとっては、自分達が建てたのにも関わらず実際に住んだ期間が全く無いという変則的な住宅でもある。



2007.08.25/記