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建築探訪
町営住宅栄町団地
所在地:
北海道増毛群増毛町
栄町,七源町

建築年:
1964年〜1968年

規模:
13棟,48戸

写真1


※1
写真4

敷地の西側からの風景
団地の向こう側に、日本海が見える。

留萌本線の終着、増毛(ましけ)に降り立ち、その前面に通る国道231号をそぞろ歩き。 道路沿いには、かつてこの場所がニシン漁で栄えた面影を偲ばせる歴史を経た建物が点在する。
それらを堪能しつつ、何気なく国道を外れて脇道に入る。 通りの向こう側には日本海。 海に引き寄せられる様にその道を進んだ先で、この町営住宅団地が視界に飛び込んできた。

全て平屋建て。屋根は金属葺きの寄棟。躯体はコンクリートブロック帳壁構造。 4住戸をひとまとめにした棟が11棟。2住戸のものが2棟。
それぞれ、建築年に合せて棟名が付けられている。 例えば、1964年(昭和39年)に建てられた4棟には、39A-1〜4。 同じく、1966年完成の2棟には、41-1,41-2。 以下、42-1〜4、43−1〜3。 なぜか、最初に建設された棟だけ、その名称に「A」の文字が付けられている。
間取りは2DKが46戸、3DKが2戸。 各住戸に一本ずつ屹立する集合煙突の連なりが、北海道らしい風情を醸しだしている。


写真2:
ほぼ等間隔に住棟が並ぶ。

写真3:
四住戸を一つにまとめた棟。 一つの住戸に一本、集合煙突が立つ。

外装が下見板張りの木造家屋が連なっていたであろう当時の街並みの中にあって、コンクリートブロックを用いた建物が次々と建設される様子は、極めて斬新で華々しい風景として捉えられたのではないか。
しかし、私が初めてこの団地を観たのは、竣工後かなりの歳月が経過してからのこと。 そこには、何ともいえぬ寂寥感が漂っていた。
まともにメンテナンスを受けることも無く、経年劣化するにまかせた住棟群。 多くの住戸は無人となり、開口部には不法侵入を防止するために板が打ち付けられていた。 そして等間隔に並ぶそれらの住棟の間を、日本海の潮風がもの哀しく吹き抜ける※1

増毛町には、この栄町団地と同じ形式の住棟によって構成される団地として、1969年〜70年にかけて南畠中団地が整備された。
この団地と栄町団地については、同町の2009年度予算の中で解体費用が計上されていた。 従って、既に現存しないかもしれぬ。 しかし今のところ、その存否を敢えて確認したいとは思わない。



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