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ニシン漁家建築
石田家番屋
所在地:
増毛郡増毛町阿分

写真1:西側外観


日本海に沿って通る国道231号と、そこから分岐する道道94号増毛稲田線が交わるT字路に面して、当該番屋がかつて建っていた。
その屋根形状は、腰折屋根が用いられている。 この屋根形式は、増毛以北のエリアに分布する番屋によく見受けられる。 例えば、このサイトで別途取り挙げている田中家番屋も同様の屋根形式を持つ。 しかし当該番屋については、建物の中央の向かってやや右寄りに、その腰折れ屋根に直交する様に切妻屋根が取り付く独特の形式をとる。 そしてその形式の採用によって、日本海に対峙する北西側立面に平入り建物としての強い正面性が付与されている。
直交するボリュームは、建物背後に貫入する様に連続。 T字型の平面形態をなす。 但し背後において、屋根形状は切妻から腰折に変換されている様子が、写真2にて確認できる。


写真2:南西側立面。左手に日本海を臨む。
写真3:
北側外観

西側立面の向かって右手が網元のスペース。 左手が傭漁夫達のスペース、いわゆるダイドコロ空間が割り当てられているのであろうことが、外観上の開口の配列から読み取れる。 もっとも、ダイドコロ側の開口の穿ち方は、かなり機械的(写真3)。 その内部に通常設えられていることが想定されるネダイの配置を考えれば極めて合理的な処理ではある。

合理的という意味では、網元側の居住スペースと思しき建物右手においても、それ以南の事例において多く見受けられる装飾的要素が見受けられぬ。 内部用途の機能に応じてガラス入り建具を並べただけといった風情。 全体的に合理的な措置によって外観が形作られているという印象なのは、建築年代がかつての鰊漁興隆の末期に属することと関わっているのであろうか。

但し、腰折れ屋根及び切妻屋根双方の矢切り部分にはドイツ壁風の左官仕上げと竪格子を吹寄せに組んだ小屋裏窓の存在が数少ない装飾的要素として外観を彩る。 それらと建物正面切妻屋根部妻壁の二階に並ぶ連窓、そして屋根形状が相まって、傾向として洋風の印象が強い外観の番屋建築となっている。



 
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2021.02.20/記