日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです |
|||||
■
|
INDEXに戻る |
建築外構造物
松見公園展望塔 |
|||
所在地:
茨城県つくば市 天久保1-4 松見公園内 竣工: 1976年 設計: 菊竹清訓 |
つくばエクスプレス線つくば駅の北方に位置する松見公園内に建つレストハウス併設の展望塔。 園内の池に面して屹立するその独特の造形には、「栓抜き塔」の通称が与えられているのだそうだ。 受付を済ませエレベーターで最上階(11階)まで昇ると、正面に薄暗い階段。 そして左右に屋外展望フロアへの出入口。 戸車が摩耗したアルミ製の引き戸を開けて外に出ると、そこは「栓抜き」の矩形の環の底辺に当たる箇所であることがすぐに了解される。 正面の壁面には西田明未が手掛けた「天門」と題する巨大なモザイク画※1。 その両脇に視界が開ける・・・と思いきや、そこには上下袴付きの軸吊りガラス戸が目線のはるか上まで取り付けられ、フロア周縁とその外部を隔てる。 更にその上部にステンレス製のごつい框を介してステンレス丸棒の柵が取り付く※2。 迂闊にもスケールを持参していなかったので目視であるが、それはおおよそ直径9mm。 丸棒同士の芯芯間隔は120mmといったところ。 地上から見上げた際に開放的な展望フロアを想像していたので、これらの付属部材の存在は結構以外であった。 一端エレベーターホールに戻る。 エレベータードア廻りの壁面は一面に白大理石。 石目をブックマッチに張り付けている。 そして天井は幾重にも折り上げられており、それなりに意匠に気が使われている様だ。 それに比して、対面する更に上層部へ向かう階段は何だかぞんざいな扱い。 暗くて狭いその階段を昇ると、しかし一気に視界が広がる。 そこは「栓抜き」の矩形の環の中心部。 そこから更に二方に分かれて取り付く屋外階段を昇って環の上辺に至る。 その動線上の全てに、ステンレスパイプ製の歩行補助手摺と11階屋外展望フロアと同じ丸棒の柵が念入りに取リ付く。 更に、環の上辺にあたる屋上の外周も同様。 いずれも眺望を愉しもうとする目線の先に必ず立ちはだかる。 これらの手摺や柵は、勿論高層部における安心感の確保や転落防止の機能を目的としたものだろう。 若しくは、防鳥の用途もある程度見込んでいるのかもしれぬ。 しかしその取り付けディテールはかなり雑。 というよりも、明らかに後付けと思われる。 白大理石とコンクリート打ち放しを使い分けて仕上げられた構造体が織り成す造形はとても美しい。 意匠性のみを鑑みるならば、そこに金属製の手摺や柵等が設置されるのは何とも野暮ったいし眺望にもやや影響を及ぼす。 設けるのであれば、もう少しその形状や取り付けディテールに配慮がほしいところ。 さりとて、それらが無ければ高所恐怖症では無い人でもちょっと足がすくみそうだ。 意匠性の追求と安全性の確保。 悩ましい相克である。 再び11階のエレベーターフロアに戻る。 そこから地上へは、エレベーターではなく階段を使って降りてみる。 暗くて閉鎖的な階段は、上層がRC造。中途のフロアに鉄骨階段を挟み、地上間際で再びRC造に変わる。 その途上の外壁にはところどころに小開口が穿たれ僅かな自然採光がもたらされている。 その開口にも幾つかの形態があり、注意深く見てみると面白い※3。 但しいずれもアクリル板が、これも雑なディテールで取り付けられている。 あるいはこれも後補で、もともとは無目の外部開口であったのかもしれぬ。 しかし床面には排水設備が無い。 竣工時は、どの様な開口だったのであろう。 下層のRC造部分に至ると、小叩き仕上げの壁面を中心にそれより上層部の雰囲気とはうって変わって意が尽くされた造形。 そのまま地上に戻る。 改めて池越しに見上げるその塔は、登頂する前の初見では気に留めることも無かった手摺や柵が目に付く。 勿論、それらが塔そのものの造形性を損なうことなど微塵もない。 それ程に強靭且つ優れた造形美を持ってこの塔は屹立するのだが、しかし頂部に昇ることが無ければ柵等が気になることも無かったであろう。 展望塔、下から見るか?宙から見るか?と問われれば、個人的には下から見上げるだけに留めておけば良かったということになりそうだ。 勿論、矩形の環部分における階段昇降を伴う動的空間体験も付属部材の存在を除けば捨てがたい魅力を有しているのではあるが。 |
||
※1:
本文中画像の矩形の環の底辺に当たる部分の向かって左手内観。 その西側の壁全面に壁画が施されている。 画像右上の二本の斜め梁は、最上層に到る階段。 ※2: 矩形の環の左手側内観展望。 外周に沿って徹底して転落防止柵が取り付けられている。 東面の朱色の壁画も同一作者による作品。 その下端と、更に下部にある面台の間も丁寧に転落柵で塞がれている。 |
|||
※3:
屋内階段内観。 |
|||
|
|
||
2018.07.28/記 |