老朽化に伴う建替え事業が段階的に進められている巨大公営住宅団地の一画に、その公園は位置する。 否、公園というよりはポケットパーク。 設えられているのは、小さな砂場とパーゴラと、そしてこのコンクリート製のオブジェのみ。

果たして、これは遊具なのか。 仮にその目的のために設えられたものだとしても、イマジネーションがすっかり硬化してしまった私にとっては、この物体を用いて如何なる遊びが展開されるのかを想定することは難しい。 さりとて、ベンチの類いでもあるまい。 これでは、それこそ座るための座れない椅子だ。 であるならば、ささやかな公共空間に華を添えるアートなのだろうか。

用途不明のこのコンクリートの塊は、しかしこの巨大団地の誕生このかたそこに在り続け、多くの住人と日常を共にしてきたのであろう。 そして今、建て替えに伴う除却を目前に控え全ての住人が退去した古びた住棟に囲まれながら、ひっそりと静かで穏やかな時間を過ごしている。