日本の佇まい
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コンクリート製遊具


昭和40年代に丘陵地帯を切り拓いて造成された、とある大規模な住宅地。 森に囲まれつつも典型的なベッドタウンの様相を呈したその宅地内に、公営の共同住宅が建ち並ぶ一画がある。
板状規格型中層建物の群体であるという点は、数多の公営団地と同様。 しかしながら少々趣を異にするのは、起伏に富んだ立地条件を活かした高低差のある住棟配置が実施されていること。 それによって変化のある景観が形成されると共に、隣棟どうしの視線の錯綜も緩和しているという印象だ。
そんな団地内の最も海抜が高いエリアに、児童公園が整備されている。 その公園にアクセスするには、長大な階段を昇ることが必須。 息急き階段を駆け上れば、そこは天空の遊び場。 来た道を振り返れば、壮大なパノラマが眼前にどこまでも広がる。
個性的且つ恵まれた環境のもと、子供たちはガリバーになり、あるいは風の又三郎にもなれたに違いない。 そして、笑い声や嬌声が眼下に建ち並ぶ住棟群に木霊し、周囲一帯は底抜けに明るくそして活気に満ち溢れていたのであろう・・・、かつては。

今、この公園に同様の風景を観ることは無い。
短期間のうちに大量供給された団地の多くに見受けられる様に、完成と同時に同世代の住人が大量に入居。 偏った年齢構成のまま一気に高齢化が進む。 更に少子化と世帯構成の変化が加わり、団地内の人口は急速に減少。 公園で遊ぶ子供も、そしてわざわざ階段を昇って休息をとりに訪れる大人もいなくなる。
いつしか誰一人寄りつくことも無くなった園内は、樹々の間を乾いた風が寂しく通り抜け、ザワザワと枝葉の揺れる音が儚く響き渡るのみ。
その様なロケーションの中に、コンクリート製の遊具が忘却に付されつつ静かに散在する。 あたかも、深い眠りの中でかつての喧騒をゆっくりと懐かしんでいるかの如く。 そしてそんな過去の記憶を、ユーモラスなその外形のそこかしこにこびりつかせつつ・・・。

配置されている遊具は、この公園独自のものという訳ではない。 冒頭と下記右側に載せた宇宙人型?の遊具に関しては、同形のものを別の地の公園で見かけたことがある。
恐らくは、他の幾つかのバリエーションと共に個々に型式番号と施工詳細図が用意されていたのではないか。 そして全国津々浦々の児童公園に、そのバリエーションの中から任意に選択された幾つかの遊具が配置されたのであろう。
たとえ規格品であったとしても、それを扱う子供達のイマジネーションは恐らく無限大。 遊具を相手にした様々な遊びがそれぞれの公園で多彩に展開された筈だ。

しかし今現在の境遇は、いずれもこの公園の状況と似たり寄ったりなのかもしれぬ。 あるいは、老朽化を理由に取り壊され、別の遊具に交換されてしまった事例も多いのではないか。 果たしてここに載せた寂しき規格型遊具達の今後の運命は如何に・・・などと若干のシンパシーを抱いたりもする。
否、それはこちらの一方的な感情。 もしかすると、誰も寄りつかぬことをこれ幸いと、人知れず園内の樹々の間を思い思いに蠢きながら遊んでいるのかもしれませんね。 えぇ、実は私が訪ねた際にも、宇宙人型遊具が眠っているふりをしつつ「だるまさんが転んだ」よろしく私の背後を、ヒョコヒョコと・・・。



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