日本の佇まい
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建築外構造物
梅田換気塔
所在地:
大阪府大阪市北区

竣工:
1963年

設計:
村野藤吾/
村野・森建築事務所


写真1:

不可侵の中心。
この換気塔を目の前にして、ロラン・バルト風のこんな言葉が思い浮かんだ。
車の通行量が極めて多い幹線道路が複雑に錯綜する交差点の中央に設けられた三角形平面の緑地帯。 その中にそそり立つステンレスパネルを表層に纏った不可思議な造形の群体。
近づいてディテールを確認しようにも、間断なく疾走する車の往来に阻まれて容易ではない。 では、その地盤面下に広がる地下街の何処からかアクセスが出来るのかと思いきや、それも叶わぬ。
従って、通常ならば遠望して愛でるに留まる。

喧騒の只中に配置され、その周囲には高層ビルが連なるロケーション。 しかし、そんな過剰なスピードと巨大スケールの渦中にあってなお、この換気塔はそれらに埋没することのない強烈な存在感を醸し出している。


写真2:

写真3:

金属パネルによって仕上げるのは不似合いとも思える有機的な形。 それでありながら、全く違和感のないテクスチュアと造形の見事な融合。 更に、表面のステンレスパネルが陽光を受けて放つ光沢と植栽の緑が織りなす鮮烈なコントラスト。

交通量の多い車道によって周囲から遮断されているという物理的要因だけではなく、その異形さがもたらす心的な不可侵性によって、都市の只中に孤絶の領域を形成している。



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