日本の佇まい
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建築外構造物
姫路市交通局モノレール線軌道跡
所在地:
兵庫県姫路市
駅前町界隈

用途:
橋脚


JR姫路駅の西側。 山陽電鉄本線の軌道が急カーブを描き、山陽新幹線や山陽本線の高架を潜る少し手前に通る幹線道路に沿って、その建物は立地する。 東西に長く南北に短い短冊状のボリュームを持つ二階建てのその建物を南側から眺めれば、屋上に奇妙な形をしたRC造の角(つの)が二本にょっきりと生えている。 上層への増床を想定し予め設置された建物構造体の一部か、それとも屋上広告の支持部材か。 建物の北側に廻ってみると、南側では隣接建物に隠れて見えなかったもう一本の角が確認出来る。 つまり、生えている角は三本。 目視の範囲ではほぼ等間隔に配列されているが、建物そのものの構造スパンとは微妙にずれている様だ。 更に西側に隣接する同規模の建物上部にも同じ角が並ぶ。

線形に続く角、というよりも列柱の正体は、かつてその上空を走っていたモノレールの軌道を支える橋脚。 その軸線を追っていけば、他にも幾つか遺された橋脚が確認出来る。
かつて姫路駅から同市内の手柄山中央公園を連絡するモノレールが営業されていた。 姫路市交通局モノレール線。 1966年に開業するも営業期間は僅か8年。 その後1979年には廃止されたが高架は遺され今現在に到る。 近年になって軌道も取り外され、橋脚のみが所々に散在する。

こんにちにおいても、モノレールは未来的な印象の乗り物だ。 雑然とした都市の地上部とは無縁に中空に軽やかに軌道が通され、ひしめく建築物の間を縫って颯爽と車輌が走行する。
冒頭に述べたように、この界隈は様々な交通インフラが錯綜する。 右上の写真においても、建物前面の通りの向こう側に山陽電鉄本線の高架橋が横断していることをご確認いただけようか。 その高架橋の背後に、T字型をした当該モノレール線の橋脚が更にもう一基屹立している。 建物直上の三本とそれを繋げば、カーブを描く山陽電鉄本線の高架を跨いでいたかつてのモノレール線の軌道が見えてくる。 そして山陽電鉄本線の高架は、建物右手で幹線道路を跨ぎJRの高架下を潜る。 複数の交通機関がダイナミックに交錯するこのエリアにあって、モノレールの車両が軽やかに中空を往来していたかつての風景も、なかなかに未来的だ。
然るに、その物理存在は、既にして遺跡の風貌。 用途を失いながらも屹立し続ける過去の遺物だ。 それは、基壇ともいうべき足元の建築物を取り壊さない限りにおいては除却されることも、あるいはわざわざ手間をかけてその様な行為に及ぶ必然性も無かろう。
都市の記憶としての物理存在は辛うじてひっそりと遺される。



2017.12.23/記