ガソリンスタンドは、言うまでもなく車への燃料供給が主だった業務。 そのサービスを円滑に執り行うためには、屋外空間への大掛かりな屋根の設置が必須となる。 一方で、往来する車の邪魔にならぬよう、屋根を支える柱の設置は最小限に留めたい。
そんな相反する与件の解法の一つに豪胆なキャンチレバーの採用がある。 その構造形式をデザインの手掛かりに個性的な屋根を実現したスタンドを時折見掛ける。 当該物件はそんな事例。 一本足で円形平面の屋根を軽やかに支えている。 柱頭と屋根の接続箇所に施された曲面が何とも優美だ。
その屋根を白一色で塗り込める一方、背後の社屋は暗いグリーン色のタイル張り。 そうすることで、社屋を背景に屋根の存在が際立つ。

このガソリンスタンドは、二本の幹線道路が鋭角に交わる箇所に立地する。 周囲の視線を集めるそんな敷地条件において、疾走する車の内部からも容易に視認されるアイコンとして屋根を機能させるべく意匠が練られたのであろう。