日本の佇まい
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建築外構造物
旧日立航空機立川工場変電所
所在地:
東京都東大和市
桜が丘2

建築年:
1938年

備考:
市指定文化財
(史跡)
  


東京都東大和市にある都立東大和南公園の中に、当該建物は忽然と建つ。
建物の正面にあたる北側立面の基本構成にはこれと言った特徴は認められぬ。 無表情な立面の中に開口が無機的に穿たれるのみ。 端正ではあるものの凡庸な外観だ。
さもありなん。 それはかつてこの地に在った巨大軍需工場内の変電施設。 デザイン性が介在する余地などあろう筈がない。
しかし、そんな凡庸な立面の表層は極めて特異。 ランダムな水玉模様宜しく、大小さまざまな円形状の歪な欠損が大量に確認される。 それがかつての戦時中に受けた爆撃の傷跡であることによって、この建物は一気にその固有性を高めることとなる。
軍事施設ゆえに徹底的な攻撃の対象となり、数度に及ぶ空襲で周囲の建物が壊滅状態となる中で辛うじて物理的に残存。 そして終戦後、所有者が変わるものの変電所の用途のまま近年まで供用。 その間、修繕等によって痕跡が消し去られることは無かった。

休日の昼下がり、園内は家族連れで賑わう。 建物前面の広場にも大勢の子供たちが戯れ無邪気に走り廻る。
ありふれた平和な光景と戦災遺構のあからさまな対置。 それこそが今現在のこの建物の存在意義であり、あるいは周辺一帯の公園整備に伴い同建物が保全され史跡に指定された眼目でもあろう。
禍々しい出自と数奇な経緯を纏いながらも、長大な時間の推移の中で当初のそれとは異なる意味や価値を外表に重く深く浸漬しつつ、今は長閑な環境の中に静かに佇む。



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2016.04.23/記