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建築外構造物
船橋給水場配水塔
所在地:
千葉県船橋市行田

竣工:
1966年

※1
写真2
航空画像*

環状道路の内側は、団地や公園が整備されている。 当該配水塔は、赤で囲った場所に建つ。


※2
fluting(溝彫)
円柱の表面に施した縦溝。

※3
Abutment(迫元)
アーチの応力を受けるために、その両端に設ける台座。

※4
Entablature
柱の上部に設ける水平な帯状の部位。


写真1:外観

船橋市西部地区を中心に、一日あたり8万立米の水を供給する施設の中に設けられた配水塔である。
かつての海軍無線電信所船橋送信所の名残を留める直径約800メートルの環状道路※1の外側に接するように、建てられている。
その風貌は、頂部に大量の水を湛えた円形の神殿といったところか。
しかも、周囲の建物を圧倒する巨大なスケールだ。

神殿という見立てのもとに、各部位を古典的な建築の規範に当てはめてみるとするならば、塔本体と同心円状に設けられた地上部の四段の階段は、基壇としての位置づけを形成している。
全周にわたって段を設けるという形態処理自体が、単なる機能を超えたデザイン的な意思を感じさせる。
その基壇の上に、柱脚を介さず直接円柱が立てられている。
円柱は、杉板型枠を用いて打設されたコンクリート造で、厳密には円形ではなく多角形断面をなしている。
従って、光の当たり具合により縦方向に幾筋ものラインを生じさせ、それがフルーティング※2の様に見えなくも無い。
そして柱の頂部は、アバットメント※3を省略し、ダイレクトにアーチが接続。
その上部のエンタブラチュア※4にあたる庇を支えている。
その庇の上に、水槽を収めた巨大な円筒形の構造体が載冠する。
どれもが適切なプロポーションを与えられ、破綻の無い全景を構築している。
神殿と異なるのは、一切の装飾が無いこと。
装飾の排除が、柱脚や迫元を省略させることとなったのか。
しかしながら、オーダーに違犯するその形態操作は、何の違和感も生じさせてはいない。



引用した図版の出典:
* 航空画像:国土画像情報(カラー空中写真)<国土交通省>
(一部加筆)

2008.07.19/記