日本の佇まい
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北の古民家
小樽の民家.2
所在地:
小樽市稲穂

西側外観


小樽は、坂の街であるのと同時に路地の街でもある。 駅前の中心街にあっても、車両交通に供する道路の間を縫うように路地が張り巡らされ、人ひとりがやっと通れるそれらの狭隘な通路に面して民家がひしめき合う。
当該事例も、そんな路地の奥にひっそりと佇んでいた。 画面右手に、奥へと急勾配を伴って下ってゆく路地。 敷地との間に生じる高低差処理のための石積み擁壁が確認できる。 こうして得られた平地に建っていた。

外壁は、その殆どを下見板張りとしながら、所どころモルタル掃き付け仕上げ(ドイツ壁)や簓子下見板も確認される。 開口部も、縦長の洋風上げ下げ窓や和風の引き違い連窓。 更には袴腰屋根や垂木を密に並べた小庇等、和と洋の要素が折衷する。 それらが、道内の他の多くの事例の様に上下階に分けて折衷させるのではなく、両階通じてランダムに配されているところが興味深い。
例えば、二階の開口は正面は洋風だが妻面は和風。 その和風の開口の直上は、正面側の軒蛇腹に施したドイツ壁をそのまま廻して垂木が並ぶ小庇と取り合わせている。 更にその直上の袴腰屋根の寄棟部分の破風には持ち送りの斜材が支持材として取り付く洋風の扱い。 一階も、玄関の両脇にドイツ壁が配され、更に右手には下見板や簓子下見板が密に並ぶ。
そんな混交状態にありながら、ギリギリのところで破綻せずに全景が取り纏められた小粋な外観。

敷地は、右手の路地を介してのみ車が往来する公道に繋がる。 接道条件を満たさぬ再建築不可の条件ゆえに、建て替えや一定規模以上の改築もままならず、結果として旧態が保持されて来たのかもしれぬ。
同様の事情により、中心街に在りながらも築年数を経た民家がほかにも多数散在。 観光資源として利活用されている石蔵等の歴史的建造物と相まって、この地固有の都市景観を醸成してきた。
しかし物理的な限界は免れ得ぬ。 そんな事態に至った古民家は除却され、利用できぬ空き地が歯抜け状に増殖する。 案外、当該民家の前面も、かつては似たような規模の民家が離隔を殆ど確保せずに建っていたのかもしれぬ。 それが除却されたが故に外観への視界が確保された可能性もあろうか。
徐々に増える虫食い状の空地はやがて纏まった広大な更地となり、合筆されて中高層マンションが屹立する風景へと小樽の街並みを変えてゆく。



 
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2026.05.16/記