日本の佇まい
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北の古民家
前源紙工業札幌営業所
旧所在地:
札幌市北区
北10条西1丁目

西側外観


同社のサイトによると、1962年7月に札幌市に営業所を設立とある。 上に掲載した画像を撮影したのは1988年11月。 もしも設立当初からこの建物を社屋として利用していたならば、四半世紀以上が経過した時点の佇まいとなる。

交差点に面した角地。 道路を挟んで右手には1901年開校の札幌市立北九条小学校。 市内在住者の方であれば、この校名を聞けば当該社屋の立地が札幌駅北口直近の好立地と即認識出来よう。
今は到底イメージ出来ぬが、80年代後半頃まで、駅北口周辺にはこの建物と同様に外壁に下見板を纏った木造家屋が多数散在した。 更に遡り60年代初頭であれば、軒を連ねて街路の風景を形成していたことだろう。
企業の地方進出にあたって、そんな街並みの一画に拠点が定められた。

下屋を張り出した一階は、向かって右手にガラスを嵌め込んだ框戸が五枚並ぶ。 両袖にショーウィンドウを配した構えは自社製品の販売を目的とした店舗かショールームの用途を容易に推察させる。 更に左手にも框戸が並ぶ。 こちらは事務所の出入り口だろうか。
二階は、二枚引き違いの出窓が四つ、ほぼ等間隔に取り付く。 一番右手の開口のみ桟の割り付けが異なるが、元々は左の三か所と同様の荒間格子状建具だったのではないか。 その箇所を除き、竣工時の様態がほぼそのまま保持されていると思われる二階部分からは、当該建物の建築年が同社社屋として供用される遙か以前に遡る可能性が見て取れる。
表層に確認される顕著な不同沈下も、築年数の長さを物語ろう。

二階の出窓の並びからは、当初は棟割長屋であった可能性も伺える。 もしもそうであったならば、もともとは住居専用だったのか。 それとも立地を鑑みた店舗併用の長屋だったのか。 下屋部分は、棟割で入る店舗がそれぞれに設えを施し、街並みに賑わいと彩りを添えていたのだろうか。 そして、同社の社屋となった際にそれらが大幅に改められ、画像の状態となったのか。
現存せぬこの建物の来歴や変容を巡り、一枚の画像から想いを様々広げてみるのもなかなか愉しい。



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2026.03.14/記