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北の古民家
異種外装材積層民家
所在地:
札幌市中央区

写真1:外観


大正から昭和初期にかけて建てられた北海道の民家において、一階を和風、二階を洋風の意匠にて設えを分けて積層させた事例は極めて多い。 従って、この場にて紹介している古民家の幾つかも、その様態に拠っている。
かつて札幌に在住していた折り、そんな民家を観て廻って堪能しつつ、しかしそれとは異なるもう一つの状況を反映させた民家が無いものかと想いを馳せていた。 例えば、様式ではなく異なる素材を積層させた事例。 階によって異種要素を積み重ねることが何ら抵抗なく普通に行われるのであれば、様式ではなく材料を使い分けて意匠を整えた例があっても良いではないか。
和洋積層パターンも、最初のうちは珍しさもあって個々を存分に堪能して歩き回っていたが、しかしだんだん接する事例が増えてくると、別のパターンを希求する様になるのは人の欲望の常。 ということで、心の片隅にそんなことを想いつつ民家巡りをするが、なかなかお目にかかれない。 望めぬ想いかなどと思い始めた矢先、この民家に出会う。 当然のことながら、会心の笑みが浮かぶ。

そう、一階を石造とし、二階に下見板を張り巡らせた異種素材積層パターン。
一階に用いられた石は、恐らくは当時市内に建つ石蔵等に良く用いられた札幌軟石。 その表面に施された「つる目」と呼ばれる荒々しい仕上げも、かつての石蔵に良く見受けられるもの。
異種素材の積み重ねのかわりに、意匠そのものは和様の分化が全く見受けられぬ。 開口部の意匠も、一,二階でほぼ同じ。

この民家の成立事由、ないしはプロセスは如何なるものであったのだろう。
勿論推測の域を超えぬ。 しかし例えば、もともと倉庫として使われていたものを住居にリノベーションし、更に木造にて二階を増築したのかもしれぬ。 あるいは、一階は最初から蔵座敷として構想されたものであった可能性もあろう。
いずれにしても、この異種素材積層例は、様式積層事例に比べると極めて稀少だ。 この事例のみならず、もっといろいろな異種積層パターンがあっても面白いと思うのだが。



INDEXに戻る 2014.02.22/記