日本の佇まい
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北の古民家
縁側のある家
所在地:
札幌市東区

写真1:外観


昨今の住宅において、縁側の存在は主流ではないという印象がある。
内外の環境を調整する緩衝帯として機能する装置であり、空調方式との組み合わせよっては北海道においても厳冬期の温熱環境制御に有効な空間となり得ると思うのだが、あまり普及していない。 防寒対策として、外壁面の高気密・高断熱化を図ることで緩衝帯を介在させる必要は無いということなのだろうか。
あるいは、限られた容積の中で最大限の居室広さを確保しようとする効率的な間取りの追求から、縁側は無駄な空間と位置づけられ排除されたのかもしれない。

冬の北海道において、家の中が寒いということは、絶対に許されない。 何にも増して冬期間の室内の暖かさが求められる。
開拓以降の住居形態の進化は、そのことを最優先課題として独自の道を歩んできたといってよい。 結果として、本州以南のそれとは明らかに異なる佇まいが形成されているが、表層的には気候風土に根ざしている面もある。

写真は、札幌市内散策中にみつけた住宅。
トタン屋根や下見板張りの外壁に、北海道らしさがあるものの、同様の他の民家と少々趣きを異にする。 それは、洋風デザインの窓が用いられていないことと、一階廻りの広縁の存在によってもたらされている。 そしてこの様に、縁側があるために開口部の多い住宅は、何となく北の大地には違和感を覚える。

外皮性能の向上。 そんな独自の進化は厳冬期における快適な室内空間を実現した。 しかしその結果、冬以外の季節との関わりが、希薄になってはいないか。 春、夏、秋。北海道にはそれぞれに素晴らしい風情がある。 それらと住宅の関係を取り戻すこと。 案外、それまでに捨ててきた深い軒下や縁側といった伝統的な緩衝帯に、その解決策が含まれているようにも思う。



INDEXに戻る 2013.06.22/記