日本の佇まい
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北の古民家
函館の洋館
所在地:函館市大町

写真1:玄関廻り詳細



写真2:玄関部分全景

1989年9月と1990年10月に、この洋館をカメラに収めている。 しかし、残念ながら外観全体を撮った写真が無い。 いずれの際も玄関廻りと思しき部分しか撮っていないのだ。 だから今となっては、全景がどの様なものであったのかも記憶に無いという有様である。
二回とも同様の撮り方をした理由についても、既に忘却の彼方だ。 崩壊が著しくて、この部分以外は撮影の対象に成り得なかったのだろうか。 あるいは、この箇所のみに特別な興味を持ったのかもしれない。

そこに展開される意匠がとても繊細で凝ったものであることは、写真.1で視認して頂けよう。
外壁に穿たれた大きなアーチの内側に、正六角形を半裁した平面形状のアルコーブが設けられている。 その三面には、ほぼ等しく古典オーダーを参照したと思しき意匠が、木造で施工されている。
函館の建築に関する資料を色々探しているが、この建物の来歴を知る手掛りは今のところ得られていない。 街中に人知れず建つ洋館といったところか。

函館の魅力といえば、例えば函館山から俯瞰する夜景が挙げられるのだろう。
その華やかさに比べ、地上レベルで見る昼間の街中の光景は、市内西部の元町地区周辺を除けばどちらかというとありふれた地味な印象だ。 しかし、あても無くそぞろ歩く先々で、時折この様な小粋な建物に出会う。 そんなところも、函館の魅力だと思う。
ネット等で確認すると、当時私を魅了したそれらの建物は、いつの間にか除却されていたり、観光資源として妙に小綺麗に改修される等々、それぞれの運命を辿っている様だ。 当然の如く、例外なく経年の作用を受けている訳であるが、そのことを実際に一つ一つ確かめて歩くのは、過去の印象があるだけになかなかに辛いことだ。 だから、もう随分とこの地を訪ねていない。
でも、そんな変容の中にも、新たな佇まいを見出す可能性が潜んでいるのかもしれない。 いずれまた、かつての様にワクワクしながら市中を彷徨する機会を持ちたいとは思うのだが・・・。



INDEXに戻る 2012.06.09/記