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札幌の二軒長屋.2
所在地:
札幌市北区

写真1:外観


眠そうな風貌の家。
それが、この二軒長屋を初めて見た時の印象であった。
JR札幌駅北口から数分の結構交通量の多い道路に面して建っていたが、そんな雑踏に対して自らを閉ざして深い眠りにつき、時折眼を少し開いて周囲の様子を窺っている。 そんなイメージが沸くのは、急勾配の屋根と、その間に設けられた三連の横長窓のためだ。

急勾配の屋根は、降雪期の自然落雪を考慮してのものであろう。 玄関先に直接雪が落ちるのは如何なものかとは思うが、そのためか、左側の住戸の玄関先には小庇が追補されている。 あるいは右側住戸の玄関にもかつては庇があったのだろうか。 ともあれ、そんな急勾配の屋根により、建物のファサードの大半が屋根面という印象を生み出している。
左右の玄関に挟まれた一階部分前面の、明らかに増設と思われる下屋部分が、更にその印象を強める。 一階の屋根と同じ勾配で、地面に到達せんばかりに下屋が伸びる。 そして、その先端と地盤の僅かな隙間も、様々な部材より塞がれている。 従って、外部から視認し得る一階の開口部は、左右の玄関のみ。 双方の玄関の間に配置されているであろう開口部は、増設された下屋により隠遁されてしまった。
狭小集密な立地にあって、南に面した立面をここまで閉鎖的にしてしまうのは、喧騒にまみれた周囲との関係を遮つ意思の表れか。
そんな閉鎖的な一階廻りの上に載る二階も、ひどく閉鎖的だ。 一階二階双方の急勾配の屋根に挟まれ、高さがあまり取れない窓が三つ並ぶ。 屋内側から見れば、ハイサイドライトの様な位置づけなのではないか。 これらの窓を挟む上下の屋根を瞼と見立てれば、三連の窓は、さしずめ三つ目の瞳だ。

ファサードの大部分を覆う屋根が閉鎖性を醸し出し、三連の窓が、面倒そうに重い瞼を少しだけ見開き周囲を一瞥している様な風貌を与える。
意匠的な意図など全く無く構成されたであろうその外観に、どこか滑稽で人間的な様相を見て取ることが出来る。



INDEXに戻る 2010.05.29/記