日本の佇まい
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北の古民家
祝津の民家
所在地:
小樽市祝津二丁目

写真1:外観


軒高の低い切妻屋根の妻面を正面に向けた意匠。 本州の様々な地方の漁村集落でも確認される形態の民家である。 北海道においても、ニシン番屋成立以前の道南地方を中心に見受けられる漁家建築の様式だ。 そして、北海道の古民家によく見かける和洋折衷の様式を伴わぬ、和式のみでまとめられた外観。
これらのことを鑑みると、相当建築年の古い建物なのかもしれない。

道路に面した側のファサードは、一階部分の開口に骨太でピッチの粗い格子が取り付くのに対し、上層の開口部では繊細な格子となっている。 更には、開口部廻りの腰壁の下見板には簓子を用いているのに対し、それ以外の壁面では省略しているといった意匠の使い分けが見受けられる。

類似する他の事例から推察するならば、側面手前に張り出して取り付いた玄関を入ると、それに直行する通りニワが、背後の崖に面した建物の裏側まで設けられているのではないか。 そして、その通りニワに面して、座敷が矩形に配置されているのであろう。

写真1の画像を撮ったのは、1989年。 この時点で既に不同沈下に伴う建物の歪みが生じていることが確認できる。
そして2009年の夏に訪ねた時点では、原型を留めぬほどに崩壊した状況であった。 内観を確認することは既に不可能である。
漁村集落として興隆した祝津の歴史を景観の側面から語る上で、貴重な存在の民家であったのではないかと思う。



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