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北の古民家
温身湯
所在地:
松前郡松前町字福山

写真1:外観


銭湯建築になる。
建物中央に配置された出入口上部の起り破風屋根部分の意匠が面白い。
その下端に渡された横架材の中央に円形の部材が取り付き、そこから軸材が放射状に配置されている。 破風屋根を支える構造体のように見えて、半ばそれ以上は意匠のための意匠であろう。 扇子を広げたような形態、あるいは、その前面に設けられた雲形の懸魚と相まって、日の出の情景を表しているようなイメージとも受け取れる。
かつては市内に多数存在していたであろう同業者との差別化を図る上でも効果的なディテールだ。
この破風屋根と出入口両脇の戸袋、そして下屋の軒裏の垂木により、一階部分は和風の意匠として認識出来る。

外観写真の右端に、1間ほど突出した部分がある。 画像には映っていないが、左側にも同様の箇所がある。
銭湯建築の類似事例から察するに、この部分は恐らくは、男女それぞれの脱衣場に設けられた便所であろう。

※1
写真1は、1985年に撮影したもの。 その後、この二つの開口部は連結され、二枚引き違い形式の連窓へと改修された。

二階は、なだらかな傾斜の切妻屋根が覆う。 その中央部分に設けられた二つの窓※1は、半紙判と思われるガラスを縦に四段嵌め込んだ両開き形式のもの。 一応、洋風のイメージということになろうか。
とするならば、ここでも和風と洋風を階層で重ねることを意識したファサードが形成されていることになる。
一階部分のアルミサッシに改修された開口部の元の形態がどのようなものだったのか。 その意匠によっては、かつてはもっと和洋折衷が明瞭であった可能性もあろう。

2005年、百年以上に亘った営業を終了。
その後、程なくして除却された。



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