日本の佇まい
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町並み紀行
杉山
場所:
福島県喜多方市
岩月町入田付杉山

写真1:

喜多方の市街地を抜けて国道121号を北上すると、右手に別項で紹介している三津谷集落が見えてくる。 煉瓦造りの蔵が連なり、市街地の風景とは異なった趣が堪能できる。
さらに数キロ北上し、途中で左手に折れて少し歩を進めると、杉山集落が見えてくる。 全体で二十戸弱の小さな集落であるが、道路を挟んで両側に立派な蔵が並ぶ。

写真1は、3件の土蔵が連なっているが、一番手前のものは、粗壁と白壁が美しいコントラストを醸し出している。
中央の土蔵は、白壁を基調に腰部分のみなまこ壁。 妻面中央に縦に二段配置された開口上部に瓦葺きの小庇が付く。 かつては屋根全体が瓦葺であった。
そして一番奥に見える土蔵は、屋根が腰折切妻形式。 集落を訪ねた際、最初に見えるのがこの土蔵である。 粗壁と腰部分の格子の取り合わせが美しい。


写真2

写真3

写真2は集落の中程辺りの景観であるが、ここでも異なった意匠の蔵が並ぶ。
手前は粗壁による素朴な表情。 奥は、石垣の上に粗壁を基調としながらも、開口廻りのみ漆喰で仕上げている。
二つの蔵の間に女性が立ち、奥の方を見上げている。 そして、その周りの路面には茅が散乱している。 この写真は、私が初めてこの地を訪ねた1989年3月26日に撮ったものであるが、ちょうどこの日、二つの蔵の奥に建っていた小さな粗壁の土蔵を解体している最中であったのだ。 女性は、解体されている様子を眺めている。 聞けば、集落の中で最後まで残っていた茅葺き屋根のままの納屋であったという。 他にも茅葺きの蔵はあるが、それらは全てトタンで覆われてしまっている。 「昨日来れば、最後の茅葺屋根が見れたのに・・・」と、申し訳なさそうに語っていたが、とんでもない。 昨日訪ねなかった私が悪いのです。 風景は一期一会。 こんなことだってあるものだ。

写真3は、集落の一番奥に位置する中門造りの家。 道路に面した部分が蔵座敷になっている。

この集落の魅力は、市街地の白漆喰壁を基本にした端正な土蔵群とは異なり、それぞれに意を凝らした個性的な表情の連なりを楽しむことが出来ることにある。 それぞれの家が、独自の意匠を競ったのであろう。



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