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町並み紀行
黒石市中町
場所:
青森県黒石市中町

備考:
重要伝統的建造物群保存地区(2005年指定)

写真1:高橋家(手前)と盛家(奥)

※1

こみせの内部空間。 ちなみに、こみせは「小見世」とも書く。
写真では判りにくいが、右上の桁部分に建具を嵌めるための溝が二本掘られた納りが確認できる。 また、柱間の床面にも、敷居が設けられている。
弘南鉄道弘南線の黒石駅から十分程度の場所に「こみせ」が連なる街区が約260mに亘って連なっている。
「こみせ」とは、家々の道路に面した側に下屋を設けて連続させることで屋根付きの通路を形成したもの。 積雪地域において、降雪期の歩行空間を確保することを目的に設けられた施設だ。 構造は基本的に木造で、もともとは個人所有の敷地の道路に面した部分を「こみせ」の用途に供し、地域全体で半公共的な歩行空間を造り出していた。
同様の設備を新潟県では「雁木(がんぎ)」、山形県の米沢周辺では「小間屋」、鳥取県の若桜では「仮屋」と呼ぶ。
かつては、市内広域に同様の施設が連なっていたのであろう。 しかし、融雪や除雪方法の効率化、あるいは延焼等の防災、そして何よりも都市化の進行の中で、徐々に除却されることとなった。
この中町地区一帯にまとまって遺されるに至ったのは、現在の市街中心地から少々離れた地理的条件が要因の一つにはなっているのであろう。 しかしそれ以上に、造り酒屋や味噌・醤油の醸造等、古い建物を大切に使う事業がこの界隈に集中していたこと、そしてかつて弘前と青森を結ぶ浜街道の中間点に位置する商業地として栄えた歴史的な“格”が、連綿と景観を維持する背景となったのではないか。

写真2
中村亀吉酒造店

写真3
鳴海醸造店

「こみせ」の幅は概ね1.3mから1.9m。 積雪期には、軒先を支える柱の間に建具や板を建て込み、歩道状空間への降雪の影響を防ぐ工夫がなされている。 写真2の中村亀吉酒造店は、全面に建具を入れた状態。
また、写真1でも、途中に腰の高さまで板を入れた部位を確認できる。
これらは、冬季以外は取り外される。

この「こみせ」の背後に、緩勾配の切妻屋根を載せた住宅が妻入で並ぶ。 そのうちの一つ、高橋家住宅は1755年に建てられたもので、国指定の重要文化財(写真1手前)。 また、街路の南端にある鳴海醸造店(写真3)も有形文化財に登録されている。



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