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観能
場所:
群馬県甘楽郡
南牧村大字羽沢

写真1


※1
別ページに記載の長野県佐久市広河原の家々も同様の形式に拠っている。

上信電鉄の下りの終着駅である下仁田駅から観能行きの路線バスに乗車。 道はひたすら山間い奥深くへと進む。 進路上に、点在する小さな集落を車窓から眺めつつ40分余。 終着の少し手前で、視界が一気に開ける。
鮎も棲む清流として知られる南牧川両岸に集落が形成され、その背後に山並みが迫る。 家々が斜面地に折り重なるように寄り添う様を愛でつつ、家並みが途切れる手前でバスは漸く終点に辿り着く。

待機所へと去って行くバスを見送り、帰路の出発時刻を停留所に掲げられた時刻表で確認。 何せ、その運行は日に数本。 訪ねたのは休日のため、その数はさらに少ない。 逃してしまっては大変だ。


写真2:
右が南牧川。その川に対して平側を向けた緩勾配屋根の民家が斜面地に並ぶ。
写真3:
南牧川対岸からの眺め。
斜面に折り重なる民家群。

帰りの時刻を確認後、集落内をゆっくりと歩く。 並ぶ家々は、その多くがこの地方においてかつて発達した養蚕農家の形式を良く遺しており、整った景観を形成している。
養蚕農家は全国各地に多様な形式が発達した。 この地域の場合、緩勾配の切妻屋根を冠した総二階造りで、2階部分の外周にバルコニーを廻した形式が多く確認できる。 一般的に1階部分が人の居住スペース、2階が養蚕スペースに供されていた。 そして出来るだけ養蚕スペースを多く確保するため、2階へのアクセスは外部階段を介してこのバルコニーを通じて行われた。 機能とデザインが見事に合致は、住まいに暮らしと生産の双方の機能が求められていた時代に、長い時間をかけて洗練された形式。 そこに地理的条件や地域性が加わり、地勢に馴染んだ風景が造り出された。

この民家形式は、観能のみに留まらぬ。 この地を訪ねるまでの経路上、バスの車窓から眺めた各集落も同様。 そして、それ以外の近傍エリアに広く同様の形式と、その群体としての集落の風景を確認することができる※1



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2016.07.08/本文及び備考欄加筆