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町並み紀行
城端
場所:
富山県南砺市城端

写真1:曲新町地区


※1

桂湯外観

私が初めてこの町を訪ねたのは1990年8月8日。 合掌造りの民家群で有名な岐阜県白川村の荻町に向かう途上、電車からバスに乗り換えるためであった。 つまり、城端に古い町並みがあるという事前の知識は無かった。
JR城端線の終着駅である城端駅に降り立ち、白川郷行きのバスを待っていた際、駅前広場に掲げられた市内の観光案内看板に「古い町並み」と記載された箇所を見かけた。 乗り換えの待ち時間は1時間程度あったから、その間についでに観ておこうという軽い気持ちでその地区へ足を向けた。
しかし、大して期待もせずに赴いたその場所は実に素晴らしい光景が連なっていた。 旧態を良く遺した町並みが、現代の日常生活の中にしっくりと息づいている。 しかも大して観光地化もしていない。

その落ち着いた町並みの散策を暫し堪能した後、2時間ほどバスに揺られて当初の目的地である白川郷に辿り着いた。
少々興ざめであった。
世界遺産に指定される以前ではあったが、広い公設駐車場に観光バスが連なり、次々と団体観光客が集落の中に供給されてゆく。 その集落は多くを合掌造りの民家群で構成していたが、その殆どが土産物屋か民宿の暖簾を掲げ、さながら観光客を巻き込んだ一大テーマパークの様相を呈していた。
勿論、それらの民家は昔からそこに建っていたものであり、テーマパークの様なフェイクとは異なる。
また、そのような観光地化を安直に批判するのも無責任なことだ。 歴史的な景観を維持する労力は並大抵のものではない。 その維持のための観光地化というのは現実的な選択の一つである。
しかし、観光地化していない町並みが息づいている城端のことを思うと少々辛い気分にもなり、計画を変更して早々に城端に引き返すことにした。

城端に戻り、余った時間は当然その古い町並みの散策にあてることにした。
通りニワを擁する町家形式の民家が道路沿いに軒を連ねる。 そのまとまった景観が面として存在する貴重な町並みだ。

街の一角に「桂湯※1」という名称の銭湯があった。
洋風とも和風ともつかぬ外観に引き寄せられるように中に入り、湯に浸かる。 浴場が2階まで吹き抜けになった開放的で心地よい銭湯であった。



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