日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです
建築探訪
建築の側面
建築外構造物
ニシン漁家建築
北の古民家
住宅メーカーの住宅
間取り逍遥
 
INDEXに戻る
町並み紀行
古潭
場所:
北海道石狩市
厚田区古潭

写真1

日本海に面した集落。
住宅の多くは平屋建てであるが、その海側には、背の高い板塀が張り巡らされている。 海から吹きつける強い風から家を守るために設置されたエクステリア部材だ。
その高さは例外なく一階の軒先を上まわるため、道路側からは家の外観は殆ど見えない。 屋根の頂部が板塀の背後に辛うじて確認出来る程度。 そんな高い板塀が立ち並ぶ様が、集落の景観の特徴となっている。

とはいっても、これは何もこの場所のみに固有の景観ではない。 かつては、道内の漁村の多くにおいて確認することが出来る風景であった。
しかし、建物自体の耐風圧性能の強化。 あるいは外装部材や外部建具の気密性の向上などが関係しているのか、設置事例は減少している。
近年において、板塀が群をなして連なる町並みは希少になりつつあるが、そんな希少事例の一つとして、この地を取り上げてみた。


写真2:


写真3:

板塀の構造は、写真2を見ればお判りいただけるだろうが、極めて単純である。
まずは掘っ立て柱を一定の間隔で設け、数段の横架材で連結。 こうして出来た木軸フレームに板を縦に隙間無く並べて固定し、防風パネルとする。 更に、斜材で木軸フレームを適宜補強すれば出来上がりである。
斜材は、防風パネルの裏表両側に設置して板塀自体の耐風圧強度を高めるのが一般的であるが、風下のみに設置する場合もある。 例えば、写真3の様に海側に面した敷地境界ギリギリに設ける場合は、道路側から観て裏側(風下側)のみの設置となる。

いずれの板塀も、経年変化でところどころのパーツが不揃いに傾いでいる。 これは、この地における猛烈な季節風の実態が顕然した状況そのものだ。 厳しい気候風土の所産ではあるが、しかしそのことが、このエクステリア部材に何ともいえぬ風情を与えている。
また、防風パネルを構成する板材の天端高さはいずれもランダムだし、補強の斜材の角度もマチマチだ。 そんな風貌も、どこかセルフビルドならではの温かみを醸し出している。

この様な防風用途のエクステリア部材は、北海道以外の漁村集落においても散見される。
例えば、板塀ではなく竹垣であるが、能登半島の上大沢地区に見受けられる“間垣”も、同じ用途の外構部材だ。



INDEXに戻る 2012.1.14/記