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間取り逍遥
集合住宅.番外編:「Just Because!」泉瑛太の家試案
物件データ

所在地:
神奈川県鎌倉市
構造:
RC造4F

※1
複数の低層棟が傾斜地に雛壇状に配棟された描写となっている。 従って、遠望からはもっと高層の建物の様に見えるし、法的な階数設定の解釈も四階では無いかもしれぬ。 ※2
実際、リビングダイニングキッチンの戸境壁や瑛太の部屋の妻壁に梁型は描写されていないのでWRCとも解釈可能だ。
ここでは柱芯を隣戸側にずらして戸境梁を片寄せとし、リビングダイニングキッチンの梁型を消した。

2017年10月から12月にかけて放映されていたテレビアニメ。 その主人公、泉瑛太が住む集合住宅について取り上げてみる。

作中に登場する内観はリビングダイニングキッチンと瑛太の部屋と洗面室、そして玄関廻り。 特にリビングダイニングキッチンと瑛太の部屋は様々なアングルが登場するし、シーン相互の矛盾は僅か。
それらの描写から、住棟の端に位置する4LDKの概ね平準的な間取りが推定される。 ポイントは住戸内における瑛太の個室の位置。 そこから、妻住戸であることが読み取れる。

試案を図面化してみると、右図の通り。
外観描写は四階建て程度の低層住棟※1なので構造はRCではなくWRCもあり得る※2。 ここでは取り敢えずRCとしてみた。
リビングの隣の部屋が和室なのか洋室なのかは不明。 但し、両者の間仕切り建具は引き戸形式なので和室とした。
キッチン脇の部屋が瑛太の部屋。 室内から扉を介してキッチンに置かれた冷蔵庫の側面が見える。 描写されている家具の配置から大凡の広さを掴むことが可能。

開放廊下側のフレームから突き出して配置される主寝室は、第5話及び11話で描写された玄関廻りの建具の配列から設定した。 特に11話では、玄関ホールに木製建具が三枚矩折に並ぶ描写が確認出来る。 その全てが居室の扉であろう筈がない。 思案の上、一枚を主寝室への出入り口扉とし、他を共用収納扉及びウォークスルークロゼットの扉に見立ててみた※3。 また、主寝室の広さや形状に関する描写は無いので、その用途の室として想定され得る家具の配置からの推察になる。
この主寝室の配置によって、ウォークスルークロゼットと瑛太の部屋の間にもうひとつの個室が生じる。 但しその存在を示す内観シーンは全話を通して一切無い。 全くの推定になるし、三人家族である泉家において、この室の使途を想定することも出来ぬ。
広さは瑛太の部屋と揃えた。 独立性や収納量等の条件を鑑みると、こちらを瑛太の部屋としても良かったのではとも思う。 敢えてキッチン脇の個室があてがわれたのは、こちらがいわゆるリビングインのためか。 それによって、極めて少ないながらも親子の会話が辛うじて自然に交わされている。 もしももう一方の個室が瑛太の部屋であったならば、会話どころか両親が登場するシーンすら発生し得なかったかもしれぬ。

プランの特徴として、建具の竪枠どうしが直角に直接取り合う納まりが多い。 前述の瑛太の部屋とLDKの扉もそうだし、主寝室とウォークスルークロゼットの扉も然り。 和室の引き戸の竪枠も、連窓サッシの方立に直接ぶつかる納まりの様だ。 これらは、様々なシーンでアングルを変えながら共通して描かれている。

※3
玄関ホールに面する三枚の木製建具がいずれもプッシュプルハンドルなのに対し、リビングダイニングキッチン及び瑛太の部屋の出入り口扉はレバーハンドルで描かれている。 同一住戸内で把手の仕様が異なるのは珍しい。
補足:
本文の冒頭に書いたシーン間の齟齬というと、例えば上記※3もそのひとつ。 他にも、バルコニーの手摺が竪格子だったりGRC製と思しきパネルを取り付けた設えであったりする。


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