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間取り逍遥
集合住宅.39:食寝分離の現在地

物件データ

構造:
RC造46F

築年月:
2026年03月

総戸数:
484戸

専有面積:
73.18平米

集合住宅.38と同じ物件の他住戸プラン。
上記住戸と梁間方向は同一寸法。 間口は僅かに広い。 そして、玄関の設えや、その玄関から二手に動線が別れる構成。 そのうちの一方のリビングに至る動線上の組み立てもほぼ同じ。
共通項を多く持ちながら敢えてページを分けて当該プランを取り上げたのは、同じ空間ボリュームにおける僅かな諸室配置の違いを読み説く面白さゆえ。

集合住宅.38は2LDKだが、こちらは1LDK。 前者の特徴であった中の間的な居室が無い。 中間領域の不在によって、"食"と"寝"の分離がより明瞭となった。 但し、二手の廊下は集合住宅.38同様に並置されながら諸室配置調整の結果いずれもやや距離が短いため、ツインコリドーとしての性格は薄れている。

ほぼ同等の床面積でありながら集合住宅.38より部屋数が一つ少ない分、サニタリー廻りに余裕が生じている。 それは、一方の戸境壁に沿って南北一列に配置。 結果、浴室には大きな外部開口が設置され、入浴しながらの眺望を愉しむタワー物件ならではの商品性が与えられた。
しかも、サニタリーへは居室内のウォークスルークローゼットを介してアクセスする。 この措置は、サニタリーをよりプライベートな領域と位置づける。 単独若しくは少人数世帯を想定した1LDKであるがゆえに割り切れる構成だ。

かつて、平面プランの在り方として提唱された食寝分離。 その具体形として編み出されたnDK形式は、両親と子供二人で構成される家族を標準モデルに住戸面積を拡張させながら姿かたちを変えつつ集合住宅においては数種の3LDKへと定型化された。 いずれの定型も食と寝の往来に係る動線は共用だが、ここではそれをも分離。 サニタリーの位置づけも含め、より概念を先鋭化した。
進行する平均世帯人数の減少が、新たな食寝分離の在り姿を提示し始めているのかもしれない。



2025.04.19/記