物件データ

屋内化された共用廊下は、高級ホテルの如くカーペットが敷き込まれ空調も完備。 各住戸の出入口は両引分けの自動ドア。 優雅な気分で住戸内に入れば、そこは玄関というよりもホワイエの設え。
内外ともに極めて高い仕様設定を窺わせる。

そのホワイエの左右に廊下が接続し、双方とも居室に向かって並行配置される。 一方は無目枠を介し、他方は開き扉が取りつく。 その違いは、それぞれの廊下が担う動線として性格の差異に拠る。 無目枠側はリビングルームに至るいわばオモテの動線。 建具を介す側は水廻りや主寝室を結ぶウラの動線。
限られた面積の中に、ハレとケの明確な区分けが導入された。

居室配置の効率や、それぞれの室の面積を可能な限り広く確保するならば、廊下を一本に集約し諸室配置を検討する措置が一般的だ。 その場合、目的別の生活動線が重複する。 日常生活において重複は必ずしも間取りの欠点とはならないし、深刻に気に留める状況でもない。
しかし、動線によって規定されるエリアの分化が無意識のうちに生活にメリハリを生み出す可能性も期待されよう。 例えば当該プランにおいては、主寝室と屋外との往来に際し、リビングやオモテ動線に一切関与せずに身だしなみの切り替えが可能となる。

バルコニー側の三室は、いずれも引込み戸で往来可能。 従って、玄関や並走する廊下も含め住戸内に行き止まりのない周回動線が形成されている。
中央の居室はリビングないしは主寝室を介したアクセスとなるが、これは一つの割り切り方。 例えばリビングとの境界を可動間仕切りとし、一体利用と独立利用の選択可能とする措置もあり得る。 しかしここでは、主寝室側とリビング側双方とも同じ建具とした。 中央居室と両側の居室の関係を等価に扱おうとする意識。
言わば「中の間」としてのこの居室を、両側の居室との連携を含め個々の日常生活の中に如何に組み入れるか。 家族構成にも拠ろうが、周回動線の組み立ての中で様々な選択が想定されよう。 また、そのような選択を可能とするのも、二本の廊下を並置した効用だ。