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間取り逍遥
集合住宅.37:動線の多岐化

物件データ

構造:
RC12F

建築年:
2024年2月

総戸数:
49戸

専有面積:
71.01平米

玄関から伸びる廊下に面する複数の居室の前を通りLDKに至る構成は、集合住宅においてよくあるパターン。 しかし当該プランはそれとは別の動線が玄関を起点にもう一つ屋内を並走する。
即ち、上り框と対面するウォークスルーのシューズクロゼット。 その奥に続く納戸。 通常はファミリークロゼットなどと呼称する。 更にその向こう側に洗面化粧室が連なり、最終的にはLDKに至る。 あるいはキッチンからバルコニーにへと抜ける動線とも位置付けられよう。
前者は、各居室へのアクセス動線。 後者は、非居室用途どうしを連携する動線。 二種の動線設定により、目的に応じた合理的で快適な室移動が可能となる。
例えば単純にLDKと各居室間の移動、あるいは各居室と屋外を直接往来したいのであれば前者を。 一方、屋内外の往来に身だしなみを整える行為を伴う場合は、後者が有用だ。 そして後者は家事動線でもある。

当該プランは、玄関とLDKを結ぶ二本の並行動線とは別の見方も可能だ。 つまり、ファミリークロゼットを起点とした三方向動線。 一つは、シューズクロゼット及び玄関を介して屋内外を結ぶ動線。 二つ目は、サニタリーゾーンに至る動線。 三つ目は、廊下を介して各居室を結ぶ動線。 住戸内のプラットホームとしてファミリークロゼットが位置付けられ、日常生活に積極的に関与する。 その措置により、往々にして荷物の死蔵場所となりがちな納戸が有効活用される可能性が期待される。

通常の「マンション田の字」と呼ばれる3LDKプランの場合、居室及び非居室用途を結ぶ動線は基本一系統に集約される。 しかし当該プランの場合、前述の通り複数の動線が成立し、いずれも非居室用途の連携を充実させている点が共通する。 その企てにより、居室のレイアウトに自由度、すなわち可変性が付与される。 提示した基本プランの場合、妻側に三つ並ぶ居室はそれぞれ固定間仕切り壁によって独立している。 しかし、オプションアイテムとして可動のパーティションや収納を設定し、それらを居室の間仕切りに置き換えて個々の居室の一体利用や任意の分割を可能とするメニュープランも提案された。 三室が整形に並び、且つ居室配置の影響を受けずに成立する非居室部分の動線が確保されているが故に可能な商品提案であろう。



 
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2024.08.24/記