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集合住宅.35:Z型の家

物件データ

構造:
RC造7F

築年月:
1971年5月

専有面積:
57.31平米

バルコニー面積:
2.5平米


板状箱型のボリュームをほぼ均等に区画して短冊状の住戸を積層させる場合、端部以外の住戸は二面が隣戸に接することとなる。 外皮となる残りの二面(その殆どが短辺方向)から光や風を取り入れるため、居室の配置等、屋内のプランは概ね固定化。 更に、配置された各居室にも外部開口を一つ設けることがせいぜいだ。
そんな中間スパンの住戸において、プランの制約を緩和すること。 あるいは二面開口の居室を得るためには、外皮の表面積の拡張を考えれば良い。 例えば、メインフレームから突出する様に居室を張り出して雁行形状を作り出すことで、それが可能となる。

当該プランは、その形式に拠っている。 即ち、扁平な構造断面を持つ四隅の柱で規定されるほぼ正方形のメインフレームに対し、外皮となる南北両壁面に突出部を設けて全体でZ型の平面ボリュームを成す。
突出部は角部屋の扱いとなり、二面開口を実現。 更に、メインフレーム内の南西隅角にインナーバルコニーを設けることで、ダイニングキッチンにもコーナーサッシを設置。 そしてそのバルコニーを介して浴室にも外部採光を確保した。


平面図

メインフレームから突出するボリュームの導入。 これは、中住戸における外皮の拡張のみならず、外観デザインに彫り深い表情を与える。
しかし一方で、単純な箱型住棟には無いデメリットも生じる。 つまり、自己日影の発生。 突出部が時間帯によって日射を遮り、奥まった外皮部分に影を落とす。 当該プランの場合、南側に突出する和室によって、ダイニングキッチンへの自然採光は太陽の南中を待たねばならぬ。 更に、戸境壁を挟んで隣戸が線対称に並ぶことを想定するならば、隣戸の同様の突出部によって、早々に影が落ちる。 季節により、採光を得られる時間は相当制限されよう。
その欠点の補完として、コーナーサッシが導入され、あるいは南面和室と続き間とする措置で採光に配慮。 そしてダイニングキッチンの北側に続く和室と連繋させ、通風性も獲得した。

当該物件の建設時は、狭小面積の中に如何に個室を多く確保するかという効率性が間取り策定における課題の主流であった。 ここではZ型の住戸ボリュームを規定することで限られた面積の中に3DKを実現すると共に、上記の商品性を付与している。
その全体像に対し、現代の少人数世帯化という状況を鑑みた場合、もう一つの間取りの骨格が見い出せる。 即ち、「公」の空間としてのメインフレームと、そこに“房”の如く接続する「個」の空間としての突出部という組み立てだ。 Z型が可能にするその明解な公私分離の構図から、現代の住宅市場を捉えた住まい方への適用性、若しくはリフォームの展開性が見えてくる。
キッチンへの給排水に係る横引き配管が可能な二重床仕様であることを前提に一案描いてみたので、以下に載せる。


リフォーム試案



 
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2023.03.18/記