日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです |
|||||
■
|
INDEXに戻る |
間取り逍遥
集合住宅.34:隔絶された個を求めて |
|||
物件データ 構造:RC造14F 築年月: 2022年12月 専有面積: 36.78平米
平面図 |
居室の外部開口がいずれも二重サッシなので、外部騒音が高い立地なのだろう。 繁華街の只中、若しくは幹線道路や線路敷に面しているものと推定される。 喧噪にまみれた周辺環境に対し、狭隘な住戸面積の条件下で如何にして落ち着いた屋内空間を獲得するか。 その課題に端的に応えたプランと受け止められる。
屋内に入ると、住戸規模に比してやや奥行の深い玄関踏み込み。
正面に下足入れが見えるのみで、更にもう一歩進んで左手に90度向きを変えて漸く玄関ホールが視界に入ってくる。
一般的なファミリータイプの3LDKプランの場合、玄関扉を開けた途端、靴を脱ぐためだけの僅かな踏み込みの正面に伸びる廊下に面して諸室の扉が並ぶ様子が目に飛び込み、屋内の構成が一瞥のうちに了解出来てしまう場合が多い。
しかしここではそれが無い。
玄関部分の設えに、屋内外の閾としての精神的な切り替えを促す措置が狭いながらも工夫されている。 個室に至るまで、屋内外の区切りが強化された玄関廻りと馬蹄形に引き伸ばされた動線を介す。 これらの平面操作によって、決して広くはない住戸内に個室に向けた奥性が獲得される。 その個室は引違い戸を閉じれば小さく穿たれた外部開口から僅かな採光と通風を得るのみ。 閉鎖性と奥性が、雑多な外部環境から隔離された個の空間としての性格を当該室に与える。 冒頭に記した課題に対し、とても明快な解答がそこに示されているが、動線の延伸は当然のことながら個室と水廻りまでの距離が離れるというデメリットも生じる。 狭隘な居住空間は、トレードオフの関係をどのように取捨選択し商品性への訴求に資するかの判断がより重要となろう。 |
||
|
|
||
2022.10.22/記 |