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集合住宅.33:中央コアの夢

物件データ

構造:
RC造5F

築年月:
2007年8月

専有面積:
175.41平米


※1

ホームコア平面図

都心部に立地するこの高額物件の住戸プランを観た際、ミサワホームが1969年に発表したホームコアを連想した。
ホームコアは、平屋建て16坪3DKで総工費100万円という当時の平均価格帯の半額程度のローコスト住宅。 それを同社の他のモデルと同等の品質を保ったまま大量供給を実現する開発方針のもと、建築生産過程の徹底した合理化と工業化が図られた。 検討はプラン構成にも及び、建物中央に居室以外に住宅に必要な機能を一間幅で帯状に収容。 その両翼に6帖の居室を二つずつ接続し、全体で四間×四間のボリュームを持つ構造的にも施工的にも合理性が突き詰められたプランが形成された※1
詳細は「住宅メーカーの住宅」に記述しているのでそちらをご覧頂くとして、その中央コア型のプラン形式は、以降も姿かたちを変えて同社のモデルに適用されることとなる。

この非居室を住戸中央に帯状に連ね、その両側に居室を並べるという点において、当該物件のプランも同様の骨格を持つ。


平面図

玄関やホール、そしてサニタリーやキッチンといった用途が中央に連なり、その両翼に居室が接続する。 勿論それは、広い面積の中で外皮から距離が発生する中央部分には採光や通風が求められる居室を配しにくく、ために非居室用途が集中せざるを得ぬという面もある。 但し、ホームコアと同様の中央コア形式により、家の中の公私も明確に区画されている。 即ち、コアの片側にはパブリックなスペースであるリビングダイニング。 他方にはプライベートなスペースである個室が並置する。

徹底したローコスト化をテーマに掲げてこじんまりと纏まったホームコア。 しかし初源の形式は、その後プランバリエーションの多様化と共に、大型化、更には二階建てモデルへと展開が図られた。 けれども、平屋建てで豊かで余裕を持つ空間を獲得しようとするならば、当該物件の様な進展もあり得よう。 そしてそれは、豊かな未来に向けてホームコアが夢見た空間に対する約40年後の応答との見立ても可能なのかもしれぬ。



2022.04.09/記