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間取り逍遥
集合住宅.31:リビングアクセスの効用

物件データ

構造:
RC造6F

築年月:
2018年01月

総戸数:
31戸

専有面積:
81.00平米

戸境壁側に居室以外に住戸に必要な用途を南北に線形に配置。 それ以外のエリアを居室用途にあてることで、非居室と居室の領域を明確に分化した構成。 非居室用途部分は北側に玄関とホール、南側にサニタリー空間を固めている。 そして居室用途エリアは、北側にLDK、そして南側に二つの居室を配置。 結果として、いわゆるリビングアクセス型、すなわち、玄関ホールからLDRを介して住戸内各所にアクセスする動線計画となっている。

この形式のプランの場合、LDK内に通過動線が生じて落ち着きのない空間となってしまう場合が往々として見受けられる。
しかし当該事例の場合は、LDK内におけるキッチンの位置を工夫することで、LD部分とそれぞれの場所に至る通過動線が錯綜せぬよう配慮がなされている。 つまり、キッチンの左側に通路状のスペースを設け、玄関から各個室に至る動線や、そこから分岐する水廻りへの動線をその部分に集約することで、LD部分が通過動線となる状況を緩和している。

北側に配されたLDKは、北面に大きな開口を穿って全開口サッシを設置。 そしてその外側に余裕のあるバルコニーを設けている。 これらは恐らく、商品性訴求に資する豊かな環境(例えば眺望等)が北側に広がっているということなのだろう。 その立地を活かすためのリビングアクセス型の採用ということには、合理性がある。
そして南面して配置された二つの居室は、面積や形状等の条件がほぼ同質。 両者が接する境界に個別のウォークインクロゼットを挟み込むことで、双方の独立性を高めている。 更に南面していることによる快適性の享受。 それは例えば、通常の片廊下型住棟における一般的なマンション田の字型平面形式の住戸における廊下側居室のそれに比べると、差は明らか。 そんな恵まれた個室の配備によって、それぞれの室を利用する者同士のコニュニケーションが疎となることも、場合に拠っては想定されよう。 そんなリスクを低減する意味でも、リビングアクセス型の間取りの骨格が有意に作用することが期待される。 つまりは、例えばDINKsの様な家族形態の場合において、快適で独立性の高い二部屋をそれぞれが専有して過度の干渉を避けつつ、しかし両者のプラットホームとしてリビングアクセス型のLDKが機能(若しくは作用)する。 ここでもう一つのリビングアクセス型採用の合理性が顕然する。



2021.01.16/記