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間取り逍遥
集合住宅.30:細分化に拠る住まい方提案

物件データ

構造:
RC造12F

築年月:
2020年07月

総戸数:
33戸

専有面積:
45.22平米

バルコニー面積:
9.12平米


平面図

床面積約45平米の2LDK。
その内訳は10帖のLDKと北西側バルコニーに面した5.1帖の居室。 更に、双方に挟まれて設けられた2.5帖の居室。 これらとは別に、ウォークスルークロゼット(以下、WTC)も設けられている。
5.1帖の方はともかく、もう一方の2.6帖の方は居室といってもその使途は限られる規模。 但し、外部開口に係る法的な有効採光の規定等をクリアしていれば居室は居室。 であるからして確かに2LDKではある。 しかし以降、この室については便宜上、不動産用語で一般的に小部屋を指す「DEN」と記載する。

通常であれば、LDKより北西側の部分は三つに細分化せずに纏まった広さの整形な居室とするところだろう。 そうしてLDKとの続き間にした1LDKとして計画する。 そのようにして纏まった面積の部屋を確保した方が、多様な生活様態への対応が可能と一般的には考えられそうだ。
にも拘わらずここで敢えて空間の細分化を図ったのは、同一規模で通常造られる1LDKとの商品的な差別化。 更にはそこに明確な住まい方提案を盛り込むことで商品性の一層の強化を目論んだということなのであろう。

その住まい方提案として、二つの読み取り方が可能だ。
一つは、食寝分離の強化。 寝室の用途に供すためのベッドを置こうする場合、DENはその広さにおいて現実的ではない。 また、通過動線となる位置及び形状からしても寝室の用途とするのは不自然である。 通常は5.1帖の居室が選択されることとなろう。 従って、以降の記述において便宜上この部屋を寝室と表記する。 この場合、寝室とLDKの間にDENとWTCが介在することによって明確且つ強固な食寝分離が達成される。
二つ目は、DENの二面性による住まい方の多様化。 DENはそこに接続するLDK及び寝室双方と、引き戸で繋がる。 そのことが、先述の通過動線としてのDENの位置づけをもたらしている訳だが、しかし一方で、その引き戸の開閉状態によってLDKとの一体化もしくは寝室との一体利用双方が選択可能となる。 勿論、双方共に閉じることで独立した空間としても機能する。 生活シーンに応じた様々な活用が期待されよう。 更に、LDKと寝室をつなぐ通過動線としての位置づけも、隣接するWTCによって確保されたもう一つの動線によって緩和される。

広告には、二人暮らしを想定した家具配置が平面図に描かれている。 つまり、LDKに二脚の椅子を対面させた小さな食卓とテレビボード。 DENに書棚と机。 寝室にダブルベッドともう一つの机。
リビングインの玄関配置によって同居人どうしの付かず離れずの自然な関係を維持させつつ、狭隘な空間に確保した二つの動線と二種の居室によって、その時々の互いの接し方に遠近を作り出すことも可能となる。 当然のことながら独居の場合においても、細分化した諸室配置がワンルームマンションや1LDKとは異なるメリハリのある日常生活を誘発することとなろう。



2020.09.12/記