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集合住宅.29:斜線の導入

物件データ

構造:
RC造6F/B1F

築年月:
1990年11月

総戸数:
34戸

専有面積:
104.56平米

バルコニー面積:
23.7平米

南東と南西の外壁面に沿って居室が配置され、外部建具が並ぶ。 その多くは部屋の形状に対して角度が45度振れている。
この形態操作は、法的な有効採光面積の確保を目的としたものであり、直接南面する開口が多数生じたことは副次的な要素でしかない。 すなわち、集合住宅物件No.22で取り上げた措置と同様だ。


平面図

このことから、敷地境界から建物外壁面までの離隔距離に乏しい配棟計画であることが推察される。 住戸数からも、大して広く無い敷地条件が読み取れる。 更に建物の構造規模に地下一階とあるのも、最下階について法的に地下扱いとなるフロアレベルの設定を行う必要があるほどに、建物高さに関わる各種法的規制が厳しい敷地条件なのであろうことを示唆する。
それらの与件により生じる斜め採光。 しかしここでは、その角度の振れが室内空間に面白い効果を生じさせている様にも見える。
例えば和室に取り付く三角平面の広縁状の空間。 その広縁と床の間の取り合わせには個性的な設えを生み出す可能性を見て取れよう。 あるいはその隣の個室についても、間口一杯に外皮側に生じた三角平面が、梁型によってその三角平面部分の直上に発生する下がり天井と相まって、それらを手掛かりに室内の家具レイアウトを様々展開出来そうだ。 リビングダイニングルームの開口廻りについても然り。
更にこれらの角度の振れたサッシと関連性を持たせたバルコニー手摺の形状が、外観にも個性的な意匠を付与している可能性があろう。 こういった意味では、この住戸プランにおいて用いられた斜め採光に伴う角度の振れは、単なる法的対処に留まらぬ積極的な商品的魅力付けという肯定的な捉え方も可能だ。

玄関廻りには、共用廊下と門扉で仕切った専用ポーチを設置。 ライトコートを添わせることで、奥行きのあるポーチに自然採光と通風を確保している。 そのポーチに面して浴室小窓及びキッチンへの勝手口を設けることで、商品性を高めている。
勝手口の導入により、キッチンに関わるアクセス経路はリビングダイニングルームを介するものと洗面室を介するものを含め3系統設定。 住戸内の動線の多様化を実現している。



2020.03.21/記