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間取り逍遥
集合住宅.19:軸性に拠る構図の純化
物件データ

構造:
RC造5F

築年月:
1978年12月

総戸数:
174戸

専有面積:
68.70平米

バルコニー面積:
9.31平米


図1:平面図

住戸中央の縦方向に伸びる幅広の廊下が特徴の間取り。 その廊下や玄関等によって作り出される縦方向の軸性を介して諸室が配置される状況からは、中廊下形式の間取りという解釈になりそうだ。
しかしここでは、もう一つの要素の存在によって別の解釈も可能となる。 それは横方向の軸性の存在。 住戸中央の横方向を水廻りの用途が貫いている。 つまり、キッチン〜洗面〜浴室。 キッチンがリビングダイニングと未分化であるが、洗面所や浴室の幅と同じラインで用途を仮想区画すれば、そこに横軸の存在が見えてくる。 キッチン脇のバルコニー側に突出した食品庫の存在が、その横方向の軸性を補完する。

縦軸と横軸の幅はほぼ同じ。 更に縦軸横軸いずれも、その領域にあてがわれている用途は非居室である。
ほぼ正方形の平面を持つ住戸を、非居室系用途を収めた縦軸と横軸を用いて四つに等分割し、分割されたそれぞれのエリアに居室をあてはめる。 居室=面状、非居室=線形という図式の成立。 そしてその図式によって規定された明確な田の字型の間取り。


図2:非居室用途と居室用途の分解図

そんな構図が面白いプランではあるが、どうせならトイレも横軸の中に収めることが出来れば、その構図が更に強化されたことであろう。 すなわち、水廻り用途としての横軸と、動線及び収納用途としての縦軸という軸性自体の機能の分化による構図の純化である。 それでなくても、玄関の正面に伸びる幅広の廊下の末端正面がトイレというのは、間取りとしてあまり美しいとは言えない。
ともあれ、この事例も戸建物件No.03の二階部分について命名した“House with the Cross”に似た状況。 LDKはともかくとして、他の三つの居室は非居室のCrossで分断されることによってプライバシー性を少々高めることが期待出来よう。

外観についても考えてみたい。
バルコニーの端部に設けられた袖壁や食品庫がもたらす外壁の凹凸からは、彫りの深い表情を持つ変化に富んだ外観がイメージ出来そうだ。

INDEXに戻る 2015.11.07/記